ソウルから大邱、セマウル号の旅(前編)

ビジネスクラスのような広々とした椅子が快適!

韓国で汽車にごとごと揺られて旅行をしてみたい、と常々思ってきましたが、突然ワールドカップ3,4位決定戦のチケットが4枚も手に入って、週末にテグに行くことになりました。それもセマウル号の特室(グリーン車)に乗って。ワオ!
当日は朝から家族全員がハイになってしまいました。子供たちはお友達に「テグに行くから今日は遊べな~いよ」と自慢してまわりすっかり夢見心地に。私はお弁当やお菓子、荷物の準備を、パパは午後の仕事の調整と、あっという間に午前中が過ぎてしまいました。午後3時50分水原駅発のセマウル号をインターネットで予約しておいたのですが、うちから水原駅まで約1時間かかる上に、駅でチケットを受け取らなくてはならなかったので、遅くとも2時半には出発しなくてはならないのです。時間的にも余裕がありませんでした。
それでも何とか予定どおりに水原駅周辺まで車で行き、友人のアパートの駐車場に車を駐車させてもらって、3時20分に水原駅に到着したのですが、チケットの窓口の前には長蛇の列。げげげーー。こんなに沢山並んでいるとは思いませんでした。クレジットカードでチケットを買うなら並ばなくても良かったのですが、うちのカードが壊れてしまったようで、自動券売機が使えないというアクシデントがあったりして。やっぱり汽車で旅行するときは余裕をもって動きたいものです。チケットを買って改札口に入ったのが3時40分でしたから、ほんとうにぎりぎりでした。
水原駅は今改装中で埃だらけだったんですが、改装中じゃなくてもこれはかなりぼろぼろのような気がしました。プラットフォームにセメントをひくときは、水平にしてもらいたいものです。なんてぶつぶつ言っているうちに、右手遠方からセマウル号がブオーと入って来ました。チケットを片手にドキドキしながら汽車に乗り込み、席を探し、荷物を片付け、そうこうしているうちに窓の外の風景が動き出しました。この時点で私たちの気分は最高潮に達してしまったのです。
セマウル号の特室はとっても良いというウワサを常々聞いていたのですが、ウワサにたがわず素敵でした。まず椅子の前後左右の間隔がゆったり広いのでちっとも狭苦しくないです。まるで飛行機のビジネスクラス(←使ったことないけど)のようでした。足を乗せる台もあるし、椅子ごとに折りたたみ式の机とジュースを乗せる台も付いているのです。
車両ごとに何台かモニターが据付けられていて、テレビが見られるのですが、イヤホンはお願いしたらタダで貸してくれました。
特室には飲み物のサービスもあると聞いた事があったのですが、本当にありました。ワゴンを押した客室乗務員のお姉さんが飲み物のサービスをしに来たのです。缶コーヒー、オレンジジュース。ポカリスウェット、水、と何でもそろっていて、これも無料サービスなのです。そしてこの客室専用乗務員を呼ぶためのボタンも椅子ごとに付いているのです。床にひきつめられたカーペットのしみと多少の汚れに目をつぶれば、とっても快適な旅行が出来るのではないでしょうか。
そうこうしているうちに車内販売が始まりました。「みかんにするめにチョコにビール」と昔懐かしいワゴンに乗せられた美味しそうなお菓子や飲み物に、旅行気分は盛り上がる一方でした。娘たちは大喜びで、私が準備したお菓子には目もくれずに、チョコボールやピーナッツなどをせっせと買い込んでいました。この車内販売は定価で売るのでお値段も決して高くないし、夕食の時間にはお弁当や地方の特産物も売るので見るだけでも楽しいです。そしてこれこそ旅の浪漫なのですよ。
さて水原を出発して3時間余りでテグに到着しました。サッカーの試合は8時キックオフだったので、大急ぎで移動しなくちゃ間に合いません。それでまたダッシュでサッカー場に向かったのです。東テグ駅からシャトルバス乗り場までは徒歩10分ほどだったのですが、例の赤いTシャツを売る人と、各種ワールドカップグッズを売る露天が沢山出ていて、私たち観光客の財布を緩めようと躍起になっていました。この日の3,4位決定戦以降は韓国で開催される試合自体が残っていなかったので、お値段もすっかり下がってしまっていて、Tシャツ3枚5000ウォンと大安売りしていました。私は買う気など毛頭なかったのですが、娘たちにおねだりされてしまって、しかたなく韓国の小型国旗とスカーフを買ってしまいました。気分よ!気分!そして乗れるかどうか心配したシャトルバスにも案外簡単に乗れて、後はサッカーを見るだけとなりました。バスには予想外にも日本人観光客が沢山乗っていて、ここは本当に韓国なの?というくらいでした。サンドイッチやおにぎりをぱくつきながら、今日はどこに泊まろうかなどと積極的に情報交換をしている日本人の姿を見ながら、日本人のタフさに驚いた次第です。
さて東テグ駅から30分余りでワールドカップ競技場に着きましたが、サッカー場はすでに興奮の渦の中、真っ赤に燃えていたのです。競技場の外には「テーハミング!ドドンドドンドン。テーハミング!じゃじゃんじゃじゃんじゃん」が響き渡っていました。私はこの日までサッカー場の屋根は、観客が雨に濡れないようにするためのものだと信じてきたのですが、どうやら応援団の声が反響するようにするための音響効果もあったようです。空から響いて来る応援団の声援に大感動してしまったのでした。
私たちの席はカテゴリー1の二階席でどうやらかなり良い席だったようです。サッカー場の真ん中付近で右も左も良く見えましたが、サッカーオンチの私はレッドデビルと一緒に応援したほうが楽しいのになあ~などと贅沢なことを考えていました。ところで電光掲示板を見ると0対1と出ているじゃないですか。こりゃ何ですか?そして席に座ったととたんに1対1になりました。そしてワオーワオーコリアと燃え上がったとたんに2対1となり、3対1になってしまったのです。拍子抜けというか、何というか。。この日の韓国は体力、気力ともに燃え尽きたカスのようで、痛々しかったです。試合後半までは4対1で負けるのではないかと、心配でたまりませんでした。
レッドデビルと全国民の熱い声援のおかげだと思いますが、韓国軍団もどうにか持ち直してくれて最後に一点返せて、本当によかったと思います。韓国は負けてしまいましたが、敗者の礼儀を守りトルコを賛美する余裕があったのも素敵だったし、選手が丸く輪を作り観客にクンジョル(大きなお辞儀)をしたのも感動的でした。ワールドカップの初勝利に始まり、夢のベスト4まで進めたんですから、奇跡のようなお話ですよね。試合を見終えて夫の親戚のお家に向かうバスの中で、こんなに沢山の観光客がテグという韓国の地方都市に集まるなんて、ワールドカップじゃなかったら考えられないだろうな、と思いながら胸が熱くなってしまったのです。
次回、みぽりん(19)セマウル号の旅(後編)に続く

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2002-07-25

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