しばさきのキムチとバット~日韓野球考・第28回~がんばれベアーズ2011『来年があるさ!』8月18日斗山ベアーズ対LGツインズ@蚕室野球場

残念ながらプレーオフ進出は絶望的。でも、来年があるさ!がんばれベアーズ!


がんばれベアーズ2011『来年があるさ!』
 日々厳しさを増す日本の不況。子供の成長、住宅ローン返済、そんなご時勢、ベアーズが気になるからと、毎年ソウルに行くのもどうか・・・今年の夏休みは大人しくしていよう。旅行も近畿圏内で日帰りか一泊、息子は電車に乗れれば満足だから、阪急宝塚線や京都線を何往復かしてあげるだけでも良いか・・・それに今年は、お盆の時期に斗山ベアーズのチョ・ソンイル次長が京セラドーム大阪へオリックス戦を見に行くと春先から予告されていたので、一緒に大阪観光というのも悪くない・・・私たち夫婦は7月初旬までそんなことを考えていた。
関西空港で今から乗り込むアシアナ機と

関西空港で今から乗り込むアシアナ機と


 しかし、結局、8月16日から19日までソウルに行ってきた。私の両親が7月に入ってから突然、ソウルに行きたいと言い出したからである。最終的に、両親、父の友人、兄の息子R君(3歳)と私の妻と息子の合計7人。私と妻以外には韓国語を喋る人間がいない上に、わんぱく盛りのR君付きである。自分の息子一人だけでも大変なのに、幼児2名である。『R君は私達が責任を持って面倒を見る』と両親が言うものの、ジュースが飲みたいだの、トイレに行きたいだの、そんなひとつひとつを解決するには、現地の言葉が理解できないと意外と大変なものである。冷静に考えると、『責任を持って面倒を見る』なんて両親の言葉は、某政党のマニフェストくらいのものである。大変な旅行になるのは目に見えているのに・・・ソウルには魔力がある。『斗山ベアーズ、ヤンニョムチキン、ロッテマート、東大門市場がおいでおいでしている機会を逃してもいいんですか?』という神の声が聞こえてくる・・・誘惑に負け、妻に7人分の航空券とホテル、携帯電話を予約してもらった。

雨が多い今年のソウル
 最近、毎日、仕事から帰ってきたら、食事をし、息子と風呂に入り、インターネット中継で斗山ベアーズの試合中継を見るのが日課になっている。しかし、6月、7月は、連日のようにパソコンを開いても肝心の試合が雨で中止というケースが多く、日本でも江南駅周辺が水浸しになったニュース映像が流れたのでご覧になった方もいるかと思うが、記録的な大雨が何度もあった。8月に入ってから少し雨量は減ったものの、私達の旅行中も結局、前半2日は雨にたたられ、8/17に観戦予定だった試合も中止になってしまった。
試合が中止になったので引き上げるチアリーダーのお姉さんと息子(8/17)

試合が中止になったので引き上げるチアリーダーのお姉さんと息子(8/17)


2011年8月18日斗山ベアーズ対LGツインズ@蚕室野球場
 この日の試合を迎えるまで、雨の中、一族郎党7人がどうやって過ごしていたかを簡単に記しておく。

-8/16夕方 景福宮近くのサムゲタンの名店『土俗村』で夕食を取る。その後、前職の同僚とホテル近くのチキン店でキア対ロッテ戦を見ながら歓談。
土俗村のサムゲタン。思い出すだけでよだれが出る。

土俗村のサムゲタン。思い出すだけでよだれが出る。


-8/17朝 明洞のお粥店『本粥・本麺大庁』で朝食後、南大門市場へ行きショッピング。息子のポロロのオモチャや文房具(クレヨンなど)、パジャマやタンクトップなどを買い込む。
昼 乙支路近くの冷麺の名店『南浦麺屋』で昼食。その後、ロッテマート・ソウル駅前店にてショッピング。
朝食はユッケジャン粥。辛くて美味しい。朝から栄養満点!

朝食はユッケジャン粥。辛くて美味しい。朝から栄養満点!


夕方 地下鉄で蚕室野球場へ行くも斗山対LG戦は中止。特別に中に入れてもらい、一塁側売店にて貸切状態でショッピング(グッズ情報は後述)。帰宅するベアーズチアリーダーと記念撮影のオマケつき。ホテルのある明洞・乙支路エリアに戻って、炭火焼肉店『韓国カルビ』にてテジ(豚)カルビ、韓牛を頂く。
野球が中止でも肉があるさ・・・

野球が中止でも肉があるさ・・・

8/18朝 両親と父の友人、甥を『チャングムテーマパークツアー』に送り出し、夕方まで私たち夫婦と息子の3人で過ごすことに。ようやく少し気楽になる。朝食は、ホテル近所のダンキンドーナツで買ってきたベーグルサンドとホットドッグ。朝食後、市内バス500番に乗り東大門へ移動、文具玩具市場へ。東急ハンズとキディランドをひっくり返したような街を歩きながら注射器型蛍光ペン、メモ帳、シールなどを買う。
東大門文具玩具市場でショッピング。少し蒸し暑くて疲れ気味の息子。

東大門文具玩具市場でショッピング。少し蒸し暑くて疲れ気味の息子。


午後 地下鉄2号線に乗り蚕室へ。ロッテマート蚕室店で海苔、味噌、菓子などを大量に買い込み、サービスカウンターへ行き、韓進宅配にて日本へダンボール2箱を送る。宅配送料の支払いで、クレジットカード端末の調子が悪く、パートのおばさんが苦戦。何度やっても決済できず。おばさんが斗山ベアーズファンで、『お客さんは韓国語がお上手ですね。そのポロシャツ、斗山のですよね?斗山ファンですか?私もですよ。今年は負けてばっかりよねぇ。キム・ギョンムン監督もさっさと辞めちゃったしねぇ(注:ベアーズのキム・ギョンムン監督は低迷する成績の責任を取る形で6月に辞任してしまった)。』なんて言われると、怒る気にもならず。

夕方 結局、球場に行く前にロッテマートへ再度出向いて、韓進宅配の送料のカード決済をする。サービスカウンターのおばさんに『さっき、端末がちゃんと動くようになったのよ。お客さんが韓国語を話せるから良かったけど…ほんとに助かったわ。何度もごめんなさいね。今晩の野球、楽しんできてくださいね』と送られて、蚕室野球場へ移動し、『チャングムテーマパークツアー』組と合流。

 こうして、いよいよ、念願の野球観戦を迎えることになった。

 いつもの通り、斗山ベアーズのマーケティングチーム長であるチョ・ソンイル次長に中央入場口で迎えてもらう。つい先日、大阪へいらっしゃったチョ次長と野球観戦や食事をしたばかりなので、なんとも不思議な感じがしたが、中央入場口でチョ次長に迎えてもらうと久々に実家に帰ってきたような感じがする。座席は一塁側ダッグアウト通路のすぐ上のテーブル席、モーニングケアゾーン(モーニングケアとは二日酔いの朝に飲めば爽快になるという東亜製薬の健康ドリンクのこと。ここの席で観戦すると試合中にプレゼントされる)。7席横にぶち抜いて準備してもらったことに、まず感激する。『ネット裏のVIP席は7席確保するのが難しかったので、一塁側テーブル席にしました』とチョ次長に説明されるが、一塁側ベアーズダッグアウトのすぐ上である。私の両親も父の友人も、『日本の球場でも、こんな良い席で見たことない!』と驚いていた。確かに日本ではテーブル席は珍しいし、蚕室野球場のテーブル席は座席間隔も広い。なので、1席35,000ウォンという高値で売り出されているのだが、人気が高いのも頷ける。

テーブル席1塁側213ブロックからの眺め

テーブル席1塁側213ブロックからの眺め


 スコアボードの時計は午後6時10分。まずは、食料の買出しである。お米好きの息子のために、コンビニでおにぎりは入手しておいたのだが、いつものように一塁側内野席下の売店でうどんを購入する。4,500ウォン(ちなみに夏の間は冷やしうどんにもできるらしい)。喜んで食べる息子を見てひと安心。そうこうしていると、もうすぐ6時半。ベアーズの選手が守備位置へ駆け出していった。愛国歌を歌ったら、いよいよプレイボールである。

 先発ピッチャーはベアーズがエース、キム・ソンウ(8-7)、ツインズが外国人投手ズーキッジ(7-4)。両チームとも主戦投手クラスの先発である。ツインズは5位で、プレーオフ圏内の4位ロッテ・ジャイアンツまで3.5ゲーム差で追い、ベアーズはプレーオフなんて夢のまた夢の6位。でも、一緒に蚕室野球場をホーム球場として使用しているライバル同士の戦いに順位なんて関係ない。両チームとも、負けられない戦いである。平日ながら22,038人のファンが詰めかけ、内野席はほぼ満席である。試合開始から一塁側の白いベアーズ応援席と三塁側の赤いツインズ応援席から大歓声が沸きあがっていた。

盛り上がる1塁側ベアーズ応援席

盛り上がる1塁側ベアーズ応援席


 父と父の友人は還暦を過ぎているが、付き合いは小学校時代からだという。満足そうな顔をしながら生ビールを片手に野球見物である。『いやぁ、すごい盛り上がりやなぁ』『韓国の(国としての)勢いを感じるわ』『昔の大阪球場の南海対西鉄みたいやな』
 私は、そんな親父たちの席まで、ときどき出向いて解説する。『今日の先発ピッチャーのキム・ソンウは数年前までメジャーで投げてたピッチャーで、さっきホームランを打った背番号50番の選手は、オリンピックやWBCにも出てた選手で、一番を打ってる39番の選手も同じく国家代表チームの選手で・・・』
試合の合間に韓国野球解説。4回表なのにテーブルの上には既にビールがいっぱい。

試合の合間に韓国野球解説。4回表なのにテーブルの上には既にビールがいっぱい。


 私と妻は何度も蚕室でベアーズの試合を見ているから珍しくもなくなっている光景も、初めて見る人間には珍しいようである。イニングの間にステージで踊るチアリーダー、尻文字チャレンジやキスタイムなどのイベント、テーブル席特典の栄養ドリンクやアイスクリームの配布などは、日本の球場では見かけないファンサービスかもしれない。スコアボードに書いてある文字は数字とアルファベット部分を除いて読めないものの、それなりに楽しんでいるようで安心した。
当たり前だが、スコアボードは韓国語だらけ。

当たり前だが、スコアボードは韓国語だらけ。


 韓国の球場の特徴として、価格の高い指定席でも、ワイワイ騒いで見るファンが多いように思う。応援団に合わせて応援するもよし、隣のガールフレンドに野球講釈を垂れるもよし、洒落の利いたプラカードを手に持ってテレビカメラにアピールするもよし、チキンに海苔巻きに焼酎にビールにスルメイカを仲間と分けあって食べるもよし。離れた席のファン同士、大声で怒鳴りあうように会話をしているのも珍しくない。この日のスタンドも大いに盛り上がっていた。米国メジャーリーグの球場もワイワイガヤガヤと騒がしいが、韓国の野球場も負けず劣らず野球場で過ごす時間を楽しんでいるファンが多いように思う。ここぞという場面で良いプレーが出たり、大きな打球が飛んだりしたら、立ち上がって歓声を上げるのもメジャーリーグとよく似ている(日本の球場だと、後ろの席から『見えないんですけど、座ってもらえますか!』と怒鳴られるが、よくもそんなアホなことが言えるものだと感心する。はっきり言おう。そんなことを言う方が非常識である)。日本の野球場は、ラッパや太鼓の騒音では負けていないが、鳴り物応援が止んだとき、スタンドがシーンと静まり返っていることが多い。料金の高い指定席では、映画館かと思うような時さえある。若い人でも、会話の少ない老夫婦がソファに座ってNHK教育テレビの盆栽講座でも見ているのと同じような感じで黙って野球を見ていることもある。関西の球場では、ひとりひとりが監督やオーナー気分で見ているファンも多く、隣や後ろのファンの会話(ぼやき?)を聞いているだけで噴き出すこともあるにはあるが、全体的に言うと、野球場の雰囲気と時間を楽しめていないファンが多いように思う。ふと、そんなことが気になった。
食事も応援も活気に溢れる蚕室野球場

食事も応援も活気に溢れる蚕室野球場


 試合のほうはベアーズが珍しく終始、主導権を握る展開。1回裏に2番打者コ・ヨンミンのホームランで先制し(コ・ヨンミン選手はホームランを打つとスイングが大きくなってスランプになりやすいので、あまり喜べないのだが)、2回表に追いつかれるも、3回は背番号50番のキム・ヒョンス選手のツーランホームラン、4回は7番オ・ジェウォン選手の3塁打で5点を挙げた。普段は四球で自滅するリリーフ陣も、この日は大崩れせず、最終的には5-3でベアーズの勝利。いまさら勝ったところで、ポストシーズンには出られないかもしれないが、残り試合は少しでも来季につながる野球を見せて欲しいところだ。今シーズン中に何度も見られた、6回以降の救援陣総崩れの逆転負けという展開にならずにホッとした試合であった。天気も少し小雨が降ったものの、ほとんど問題なく、一家揃って大満足の野球観戦であった。
この日の始球式とファンサービスのイベントで蚕室野球場を訪れていたミスコリアご一行と記念撮影

この日の始球式とファンサービスのイベントで蚕室野球場を訪れていたミスコリアご一行と記念撮影


 2009年に1歳1ヶ月にして初めて蚕室に連れてこられた息子も、3歳になり、少しは応援歌に合わせて手を叩いたり、歌ったりできるようになった。まだ野球のルールは理解していないものの、野球場は『父ちゃんが楽しそうにしていて、みんなで歌ったり踊ったりして、アイスクリームやおやつも食べることが出来る場所』と認識し始めたようである。息子よ、こんな父親の下に生まれたのも運命だ。これからも野球場についてくるのだぞ。
斗山ベアーズのチョ・ソンイル次長と勝利のハイタッチをする息子

斗山ベアーズのチョ・ソンイル次長と勝利のハイタッチをする息子

応援風船を持って応援する息子

応援風船を持って応援する息子


<蚕室野球場情報>
208ブロックの名物4人組『熱血男児』に注目せよ!
 
今年のベアーズは5月から転落の一途を辿っている。しかし、少しでも明るい話題は無いものかと今日もNaverでベアーズ関連ニュースをチェックしている。そんな中、スポーツ朝鮮7月25日付けに面白い記事が出ていた。見出しには『話題の斗山ファン熱血男児4人組“広告出演依頼も” (화제의두산팬열혈남아 4인조, "광고요청까지받았다.")』とあった。
http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=107&oid=076&aid=0002128945
 記事の内容は、蚕室野球場で斗山ベアーズのホームゲームが開催されているときに、一塁側レッド指定席208ブロックにイカツイ4人組が熱烈に応援している姿がテレビ中継でもよく映されているが、彼ら4人組の正体とは一体何なのかを取材した内容であった。記事によると、3年前に蚕室野球場で運命的に出会ったのをきっかけに、自然と親しくなり、シーズンを経ているうちに今のように4人組で応援するようになったという。ユニフォームの背中にはいつも座っている座席の208ブロックにちなみ背番号208、背番号の上には名前の代わりに年齢順に『熱血○番目』と縫いこまれ、周囲から『熱血男児』と呼ばれているという。もともと組織的な応援スタイルを採用したり、グループの名前を名乗ったりするつもりはなかったようなのだが、4人で息もピッタリと選手別応援歌に合わせて踊る姿は、今や蚕室野球場の名物ともなっている。サインや写真撮影の依頼を受けたり、広告にでないかと誘われたり、飲み屋でも代金を受け取らないと言われたりと、スターや芸能人のような扱いを受けることもあるという(でも、お金のためにベアーズを応援しているわけではないので、金が絡む申し出は全て丁重に断っているとのこと)。
 私自身、前からテレビ中継に何度も映る4人組の存在が気にはなっていた。これは、一度、真相を調べに行かねばと、今回のLG戦の試合前、208ブロックに行ってきた。試合中はサングラスに白手袋、タオルを頭に巻いてイカツイ雰囲気を醸し出しているものの、実際に会うと、とても優しい方々で、『日本から来たのですが、皆さんのことは、テレビ中継やNaverのニュース記事を見て気になっていたので、ソウルナビという観光案内サイトで紹介させてもらってもいいですか?』というと、写真撮影まで快諾してくれた。『ニュース記事にもあったと思いますが、毎日のように球場に来ていますよ。ベアーズの試合は、だいたい90%以上は応援に行きます。もちろん地方遠征にも行きます。日本からいらっしゃった方々も一緒にベアーズを応援しましょう』とのこと。
 スタンドが満員でも、絶対に見つけられる4人組の熱烈応援。蚕室へベアーズの試合を見に行くときは、彼らと一緒に踊って叫べば盛り上がること間違いなし!
熱血男児の皆さんと記念撮影。試合中はグラサン姿でちょっとイカツイけれど、陽気な方々です。

熱血男児の皆さんと記念撮影。試合中はグラサン姿でちょっとイカツイけれど、陽気な方々です。


新商品も続々、グッズショップ
 今回は、今シーズンから新たにオープンしたアパレルグッズのブルーマジックを紹介しようと思う。もともとメジャーリーグのグッズをOEM生産していた会社だそうで、ポロシャツ、Tシャツ、ホットパンツなど、今までのベアーズグッズとは一味違うテイストの商品が並ぶ。特にお薦めしたいのが、Tシャツやジップアップパーカーなど、カップルや親子で一緒に着られる商品で、サイズも豊富。場所は内野席下のバーガーキングやKFCが並んでいるところ。試合中は比較的空いているのでゆっくりサンプルを手にとって商品を選ぶことが出来る。
ポロシャツは45,000ウォン、Tシャツは25,000ウォン。ベアーズ会員は割引特典あり。

ポロシャツは45,000ウォン、Tシャツは25,000ウォン。ベアーズ会員は割引特典あり。

ブルーマジックのTシャツを着ている嫁さん。『斗山ファイティン!』

ブルーマジックのTシャツを着ている嫁さん。『斗山ファイティン!』


【今までの「がんばれベアーズ」・「日韓野球考」シリーズ(2003年~)】

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2011-09-19

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