じわじわキテル厚岩洞(フアムドン)を歩いてみよう!

今インスタで話題のスポット、日本家屋カフェに行ってきました!

こんにちは!ソウルナビです。ソウルに長くいると日本の友達や知り合いを個人的に案内することもしばしば。先日、10年ぶりにやってきた知り合いに「昔ながらの普通の町並みが見たい」といわれ、案内したのがココ、ソウル駅の向かいに広がる厚岩洞(フアムドン)。ニュータウン、再開発の波が押し寄せ、高層のビルやアパートが急増し、めまぐるしく変化していくソウルで、いい意味で開発があまり進んでいないこのエリア。明洞、南山、梨泰院といった一大観光地に囲まれたソウル都心のど真ん中にありながら、人の匂いのする庶民の生活がまだ息づいています。この厚岩洞は日本統治時代に日本人が多く住んでいたところとしても知られ、歩いてみると、あちこちに日本人にとって馴染みのある家が目につきます。そのうちの一軒がなんとカフェとしてオープン、インスタでも話題になっているというので、さっそく、ナビも行って来ました^^

ソウル中心部に残る庶民の町並み、 厚岩洞(フアムドン)周辺

地下鉄3号線ソウル駅、淑大入口駅、南山、米軍基地に囲まれた、ゆっくりと時が流れる厚岩洞。洞の堺が入り組んでいるため、周りの葛月洞(カルウォルドン)、会賢洞(フェヒョンドン)なども含め、庶民の台所として機能する在来市場、学校、公園、ビラや古い一戸建て住宅などが少しずつその形態を変えながらも残っていて、庶民の生活が垣間見られるエリア。2009年に解放村(ヘバンチョン)の開発と共に大規模な再開発計画があったものの住民の反対で白紙化されため、部分的かつ小規模な開発だけが進み古い町並みが残っているとか。現在、平澤(ピョンテク)に移転中の米軍基地の跡地に家族公園が造成されると、今後この辺りもまた変わっていく可能性は十分あり。一度行ってみたいと思っていた方、その前にぜひ一回りしてみてくださいね。

日本家屋、洋屋、韓屋が混在する町

冒頭でも少し触れましたが、厚岩洞(フアムドン)周辺は日本家屋が多く残っており、日本家屋、韓屋、日本式の洋屋など様式の違う住宅、そして高層ビルまで混在するエリア。特にここは朝鮮総督府鉄道局の職員用官舎と朝鮮銀行の社宅があり、1920~1930年ぐらいから1945年まで多くの日本人が住む高級住居地域だったとか。終戦と共に家だけが残り、韓国政府から民間に払い下げられ、そのまま住宅として補修・改築しながら使われてきた家々は時間の流れがここかしこに感じられます。
ところで実は、韓国では「敵産家屋(チョクサンカオク)」ともいわれる日本家屋。終戦までの植民地時代に日本人が日本の角材を輸入して建てた家屋を意味し、ソウルのほか浦項、仁川、釜山などの港町を中心に今でもまだ韓国のあちこちに残っています。敵産、つまり敵が残していった財産ということで、韓国の人々にとっての日本家屋の存在を表した露骨な表現ですが、時を越え、世代を超えて、さまざまな意味を含んでいるよう。

今この辺りでほっとなお店、日本家屋カフェ「アナーキーブロス」

今日の目的地に到着~。一瞬通り過ぎてしまいました。看板らしい看板もなく、自己主張も控えめ。住宅街の町並みに溶け込んで、ひっそりと佇んでいます。立ち止まってよ~く見てみると、意外や意外、カフェであってます、あってます。ソウルでこんなカフェに出会えるとは。日本家屋というと一般の人が住んでいる住宅がほとんどなので、中に入れるチャンスもなかなかありませんから。さっそく、お店へ入ってみましょう!

確かに日本家屋ながら、レゲエやポップスなどの音楽が流れ、ビール瓶が並び、カウンターにはローマ字の店名が刻まれているカフェ&パブ。白い壁には映像が映され、ドライフラワーや絵が飾ってある不思議な空間です。中庭を覗くと、キャンプ用のチェアやバーベキューグリルがあり、ちょっとしたキャンピング気分を味わえそう。

(※お店の住所は葛月洞ですが、厚岩洞にすぐ隣接した場所です。)
玄関を入るとすぐに2階への細い階段があり、日本家屋らしいつくりです。右に伸びる廊下を進むと、庭を囲むようにジグザグに並ぶいくつかの部屋をそれぞれ、カフェのテーブル席、事務所スペース、キッチンカウンターに利用。複雑な構造が空間を区別しやすかったのかも。1階はヴィンテージ風の色んな形の椅子やテーブルが置かれ、階段を上った2階は、床の上に高さのあるテーブルと椅子が並び、押入れには足の短いテーブルとクッションが。住居用の家だっただけに、全体的にくつろげる雰囲気。

迎えてくれたのワイルドなイケメンオーナー。

せっかくなんで、オーナーにちょっとお話をうかがってみることに。

Q:ソウルで初の日本家屋カフェ?
オーナー:正確に調べてはないのでよく分かりませんが、ソウルはここが初めてかもしれません。釜山やテグにはあるようですが。この厚岩洞もよく散歩しながら見てみても、お店として営業している日本家屋はまだ見かけていません。

Q:ずばり、なぜ日本家屋をカフェに?
オーナー:日本家屋に一目ぼれしたんです。私は建築家で、ここは建築事務所を兼ねたカフェ。安く建築事務所を構えたい私と、タイミングよく独立してカフェをやりたい友達と話が合い、それに合う場所を探していたんです。家が一山(イルサン)なんで、最初はそこから通いやすい弘大、延南洞、上水洞、望遠洞を調べていたんですが、どこも大幅予算オーバー。比較的、家賃が安いところを探しつつ徐々に南下した最終ラインがこの厚岩洞。偶然見つけたこの物件を見て、一目で気に入ってしまいました。韓屋(ハンオク、韓国の伝統家屋)は特有の曲線美が際立つ建築様式だとしたら、日本家屋はまさに直線美。簡潔にまっすぐに伸びた木構造の線と壁面の調和がとても印象的でした。ここも実は予算よりもオーバーしてたんですがね。
Q:カフェの建物は築どれぐらい?広さは?
オーナー:書類上では1958年になっていて、築60年ぐらいなんですが、その前に建てていたものだとは思います。家の面積も正確な数字が記載されてなかったんですが、図面を描いてみてみると50坪ぐらいだと思います。

Q:以前は普通の住宅として使われていたんですか?
オーナー:私の前の方はフォトスタジオなインテリア関連のオフィスとして利用していたようです。間取りや残っていたインテリアを見ると。2~3ヶ月空き家のままだったのでかなり汚かったんですが、大家さんが2年前に全体的に修理をしていて、借りたときも比較的よい状態でした。大きな改築、修繕などはせず、部分的に手を加えた程度です。
修理期間は昨年(2016年)12月のお店オープン前に2ヶ月ちょっと。けっこう掛かりました。電機線などの専門的な部分を除いてすべて自分たちでやったんで。やはりアマチュア集団がやるわけですから仕方ないですね。友達が代わる代わる手伝いに来てくれて、ペイント塗りをずっとやっていた気が。でも楽しかったです。何かを作るのが好きなんで、その過程が楽しい。実はお店の運営にはあまり興味がなかったり…(苦笑)

Q:手を加えるときに特別気を使ったところは?
オーナー: 大家さんの希望もあり、必要ないものは取り除き、基本の角材などは手をつけないように。それで、途中で補修した外国産の木や鉄材などはすべて取り除き、日本家屋らしいまっすぐ伸びた木の柱など、日本の質のよい角材は残しました。

Q:お店を構えるにあたって、日本家屋、敵産家屋ということで意識したことは?
オーナー:過去の歴史のうんぬんというより、この建物の空間が魅力的でした。ソウルにある日本家屋はほとんどが住宅で一般に開放されたところは見たことがありません。個人的に初めて日本家屋に接したんで慣れないというはありましたが、家の中の構造が日本らしく繊細かつ複雑なつくりで、この韓国にはない構造も気に入った理由の一つです。見る角度によって違うように見えるのも魅力でした。韓国にはこんな構造はありません。韓屋は中庭を中心に母屋、別棟などがあるシンプルな空間ですから。


Q:お客さんの反応は?
オーナー: 工事をしているときから、「写真を撮っていいですか?中に入ってもいいですか?」という人がとても多くて、韓国人も興味があるようでした。韓国にたくさん残っているとはいっても、日本家屋自体が韓国人にとって見慣れない空間なんで。まずこの構造が珍しいんだと思います。意外と広いという方もいますし、うちのカフェに初めてきたお客さんは迷子になる人もいるほどです(笑)
私も最初の印象は迷路みたいだったんですよ。

Q:日本人的には考え付かないインテリアが斬新です。特に押入れがちょっとしたプライベートシートに?
オーナー:押入れ部分はもともと扉がないオープン空間で、少し狭いですがテーブルを置くのは自然な感覚でした。こんな個別な空間があってもいいなと。日本の伝統家屋を専門的に勉強したことがないので、逆に自由な発想が可能だったのかもしれません。お客さんの中にはこの空間を好む方もいれば、すぐ横に別のテーブルがあるので避ける方も。そう、本当はここに何かパーテーションを設置したかったんですが、予算不足でそのままになっちゃってるんですよ(笑)
インスタなどをみてみると、「洋服ダンスに入った気分」なんていうコメントもありました。10代、20代の方ならもともとの用途は知らないと思うんですが。

Q:建物のために苦労されたことは?
オーナー:もともとお金を儲けようと始めたわけでななく、家賃ぐらい稼げればよいと軽く考えてましたが、維持費がけっこう掛かりますね。木造で隙間も多く電気代と暖房費がハンパじゃないです。冬はホントに寒い。寒い冬が終わりやっと暖房費が節約できると思ったら、今度は暑い。エアコンも壁が土で出来ているので天井エアコンにしたりと冷暖房の配置・設置も苦労しました。

Q:カフェでゆっくりするには平日?
オーナー:ええ、そうですね。ここは住宅街。繁華街ではないので平日はのんびり出来ると思います。週末はお客さんが多いです。以前は近くに大きな教会があり、その信徒さんが多かったんですが、最近は写真の好きな若い女の子が多いです。また今年になって、この通りに少しずつお店が増えてきています。西村から移転してきたビール屋さんに、国際カップルがやってる手作りアイスクリーム屋さん、手作りチーズケーキ屋さんのほか、向かいも今工事中です。さらに、米軍基地が平澤に今移転中だと聞いています。完全に移転した後に家族公園になったら、また雰囲気が変わるかと。完成するにはまだずいぶん時間が掛かると思いますが…。
小さい頃からバイオリンを習っていたというオーナー。長年ミュージカルの仕事をしながら大学路で活躍する父と、日本語・英語・中国語が堪能な母の元で育ち、商品デザイン、映画、音楽、芸術と多方面で作業を続けらっしゃる意欲旺盛な30歳。現在、オランダの大学院にデザイン留学中の弟はメジャー、自分は土俗。韓国で土方のおじさんたちとぶつかり合いながら、マッコリを酌み交わしながら、汗を流しながら、何かを作るのが好き。弟の抽象的ながらも奇抜なアイディアと、自分の建築的でロジカルな思考を合わせて新しいものを作り出す作業をこれからも続けたいそう。お話をうかがっている途中、近所の小学生が汗だくになってやってきて、「水一杯ください」と。「おっ、わっそ(お、いらっしゃい)」と背中をポンとたたきながら、すぐに冷た~い氷水を出してあげる姿も情深くてかっこいい。厚岩洞っぽい光景にナビもほっこりです。

それにしても、この十数年の間、ソウルの繁華街や住宅街の変貌ぶりは目を見張るものが。都市の大通りや住宅街が高層化し、また庶民の町や工場・倉庫エリアにお洒落なお店が次々とオープンして話題のストリートが形成されたり。昔の飲み屋街の雰囲気が楽しめる鍾路のピマッコリや、東大門市場にごちゃごちゃと並んでいた小さなテント店舗が高層ビルにすっきりと収納されて面白くなくなっちゃいましたが、「梨泰院経理団ギル」、「聖水洞(ソンスドン)」に「延南洞(ヨンナムドン)」、「望遠洞(マンウォンドン)」、「益善洞(イクソンドン)」などなど、ソウルの庶民エリアが今話題のHOTプレイスとして浮上するのは実はナビもけっこう楽しみ。馴染みのない町に特色のある楽しいお店が集まっているのも魅力です。これからこの厚岩洞も、ソウルのHOTプレイス、HOTストリートに仲間入りしているかも。要チェックです^^皆さんもこの厚岩洞の町並みを見ながら散歩しつつ、カフェでほっこりしてはいかが?以上、ソウルナビでした。

 

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2017-06-09

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