コリアン・フード・コラムニストの旨旅レポ(1)~忠清北道清州編

清州式の醤油サムギョプサルを食べに

清州の玄関口となる五松駅。市内までは車で3~40分

清州の玄関口となる五松駅。市内までは車で3~40分

アンニョンハセヨ、K・F・Cです。と書いてどれほどの人にわかっていただけるでしょう。もうだいぶ前になりますが、過去にもナビで記事を書かせていただいておりましたK・F・Cこと、コリアン・フード・コラムニストの八田靖史です。今回こうして久しぶりにナビで記事を書くことになりましたので、いまいちばんハマっている忠清北道(チュンチョンブクト)という地域を紹介してみたいと思います。道庁所在地のある清州(チョンジュ)まではソウル駅から高速鉄道のKTXで4~50分程度。気軽に足を運べる地方都市のひとつです。

歴史ファンにもおすすめしたい町

繁華街のソンアンキル。教育都市の清州は学生が目立つ

繁華街のソンアンキル。教育都市の清州は学生が目立つ

まずは忠清北道全体の紹介から。韓国の地図を開いて、ちょうどド真ん中にあるのが忠清北道です。韓国では唯一となる海なし地域。どこからも行きやすく、どこへ行くにも便利というのが地元の人の自慢です。中でも道庁所在地の清州は交通の要衝として栄えた歴史があり、現在では人口83万人を超える大都市として成長しました。市の北部には清州国際空港があって、日本からは関西国際空港より直行便が毎日就航しています。

上党山城。忠清北道は三国時代の山城が約50ヶ所残る

上党山城。忠清北道は三国時代の山城が約50ヶ所残る

忠清北道を語るうえでは、歴史的な魅力に富むという部分もアピールしたいところ。4~7世紀頃に新羅、百済、高句麗という三国が勢力を争った時代があり、忠清北道はそれらの国がぶつかり合った激戦地でした。あるときは百済、あるときは高句麗、そして最終的には新羅がこの地を治めたのですが、支配者がコロコロと変わった結果、忠清北道には三国すべての遺跡が入り乱れて残ることとなりました。地形に沿って建てられた山城をはじめ、歴史ある寺院、石碑、石塔などが大きな見どころです。

国立清州博物館。建物は有名建築家キム・スグンが設計

国立清州博物館。建物は有名建築家キム・スグンが設計

地域の歴史をひと通り頭に入れるのであれば、まず国立清州博物館を訪ねてみるのがおすすめです。すぐ近くには百済時代からある上党山城(サンダンサンソン)があり、城壁に沿っての散歩とセットで楽しむことができます。時間的に余裕があるなら上党山城から国立清州博物館まで、ゆったり1時間半ほどかけてゆるやかな山道を降りてくることもできます(K・F・Cは南門から西南暗門まで城壁を歩いて国立清州博物館まで下りました)。

ユッコリ総合市場。地元の人も日常の買い物に訪れる

ユッコリ総合市場。地元の人も日常の買い物に訪れる

市内をさっと見るなら、ユッコリ総合市場から繁華街のソンアンキル、清州中央公園一帯を散策するのが定番コース。入口前の六差路(ユッコリ)が由来となったユッコリ総合市場は、1200軒以上の店舗が集まる巨大な在来市場です。眺めて歩くだけでも活気を感じられますし、名物であるミニチョッパル(豚足の足先煮)や、セウマンドゥ(エビを丸ごと入れた餃子)などをつまんでみるのも悪くありません。

清州式醤油サムギョプサルを味わえる「忠州トルグイ」

清州式醤油サムギョプサルを味わえる「忠州トルグイ」

清州中央公園を抜けると、西門市場サムギョプサル通り。市場内にサムギョプサル(豚バラ肉の焼肉)の専門店ばかりがずらりと並んでいます。大都市だけあって清州は珍しいB級グルメの宝庫なのですが、その筆頭と言えるのがサムギョプサル(豚バラ肉の焼肉)と言えます。ええ、もちろんサムギョプサル自体はごくありふれた定番メニューなのですが、その焼き方にちょっとした特徴があるんですよね。

卓上に用意された醤油ダレに浸してから石板で焼く

卓上に用意された醤油ダレに浸してから石板で焼く

それがこのチランムルと呼ばれる特製の醤油ダレに浸すスタイル。「チラン」とは土地の方言で醤油を意味し、「ムル」は水。ショウガ、タマネギなどと煮込んだ醤油ダレにくぐらすことで、豚肉に下味をつけるとともに雑味を除くとの意味合いがあります。最近では韓方材を入れる店も多く、地元人気の高い「忠州トルグイ」では、月桂樹やトウキの葉など7種類の韓方材を加えているそうです。

看板メニューのサムギョプサルは1人前W1万1000

看板メニューのサムギョプサルは1人前W1万1000

興味深いのはこの清州式醤油サムギョプサルを、現地では「シオヤキ」とも呼ぶこと。清州は日本統治時代に大勢の日本人が移り住んだ地域で、いまでもその名残があちこちに見られます。この「シオヤキ」という単語も日本語の「塩焼き」が由来で、どうやら豚焼肉を指してそう呼んだのが始まりとか。ただし、なぜ醤油ダレに浸す焼き方が「シオヤキ」として定着したかはいまもって謎です。

ハンジョンサル1人前W1万4000、ポックムパプW2000

ハンジョンサル1人前W1万4000、ポックムパプW2000

ともかくもカリッと焼けた豚肉はなんともジューシー。醤油ダレといってもそこまで濃い味付けではないので、ほんのりとした塩気をまといつつ、醤油の風味で香ばしさを引き立てるとの印象です。この焼き方はサムギョプサルだけでなく、脂の乗ったハンジョンサル(豚トロ)でも人気。仕上げのポックムパプ(チャーハン)は、ハート型に仕上げたうえで、中央にポトンと生卵を落とす粋な仕掛けでした。

リアルココナッツピンスW1万3000(夏季限定)

リアルココナッツピンスW1万3000(夏季限定)

サムギョプサルを食べてまだ余裕があるなら、清州屈指の夜景スポットでもある壁画村のスアムコルへ。『製パン王キム・タック』や『カインとアベル』など、有名ドラマのロケ地として有名ですが、高台にたくさんのカフェがあって市内を一望にできます。どの店もテラス席を備えていて素晴らしい眺めを楽しめますが、そのお供として個人的にぜひおすすめしたいのがカフェ「HILL TOP」のリアルココナッツピンス(ココナッツカキ氷)。清州の夜を締めくくる優美なデザートになるはずです。


■□■お店データ■□■
忠州トルグイ(충주돌구이)
忠清北道清州市上党区南社路89番キル37
충청북도 청주시 상당구 남사로89번길 37
043-253-0531

HILL TOP(힐탑)
忠清北道清州市上党区寿岩路36番キル10
충청북도 청주시 상당구 수암로36번길 10
010-2544-0420

八田靖史氏のプロフィール

八田靖史(はったやすし)
コリアン・フード・コラムニスト。慶尚北道、および慶尚北道栄州(ヨンジュ)市広報大使。1999年より韓国に留学し、韓国料理の魅力にどっぷりとハマる。韓国料理の魅力を伝えるべく、2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆活動を開始。最近はトークイベントや講演のほか、韓国グルメツアーのプロデュースも行っている。著書に『目からウロコのハングル練習帳』(学研)、『魅力探求!韓国料理』(小学館)、『八田靖史と韓国全土で味わう 絶品! ぶっちぎり108料理』(三五館)、『食の日韓論 ボクらは同じものを食べている』(三五館)ほか多数。最新刊は2017年8月刊行の『イラストでわかる はじめてのハングル』(高橋書店)ウェブサイト「韓食生活」を運営。

その他情報

※写真は著者より提供のものを利用しています。
関連タグ:忠清北道清州

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2018-08-13

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