オドゥサン(鰲頭山)統一展望台

オドゥサントンイルチョンマンデ오두산통일전망대

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たかのなびの「オドゥサン統一展望台」に行く!

予約がいらない、北朝鮮が見える場所への旅。

実はソウルから北朝鮮までの「国境」までは近い。ソウルから車に乗ってわずか50分。東京で言えば利根川が国境のようなものである。そんな近いところにある「北朝鮮」をみられる、しかもありのままの、「北朝鮮」が見られるところがあるときいてやってきた。
(※取材したのは2000年12月です)
「オドゥサン統一展望台」。南北の「国境」をみるところといえば、板門店やら南侵第3トンネルとかが有名である。しかしいずれもツアーで行かなければならなかったり、服装のチェックがあったり、誓約書を書かされたりとたいへんである。しかしそんなわずらわしいことがいっさいなく、韓国の人が自由に訪れる「国境」がある。それが「オドゥサン統一展望台」である。

ロッテホテルから車で北へ走る。30分もするとソウルは住宅街を抜ける。あたりは田舎の風景が広がる。
一見普通の田舎の風景である。左側に見える鉄条網を除けば。
右側には普通の田舎の風景。左側には鉄条網。すっごく異常な光景。それが平和に静かにそこに普通にある。なんだかこちらが鉄条網に囲まれて自由でないような気がする。とっても不思議な気がした。
出発して約50分。展望台の近くのある山のふもとの駐車場についた。
ここから専用のバスに乗り換えて上って行くのである。
しかし駐車場にはだれもいない。がらん。平日の午前中、というのもあるのかな。しかしその専用のバスの運転手さえいない。
しょうがない、運転手がやってくるまでぼーと待った。
駐車場を取り囲むようにしてあるお土産屋や食堂のアジュンマから声がかかる。
やがて運転手がやってきた。
バスは出発するとすぐ展望台のある山を登り始める。
山道の入口には軍隊がいた。とっても静かだが、ここは敵の最前線である。にわかに緊張する。
上っていく道の脇にはたくさんの絵が。統一を祈願した子供たちの絵らしい。
5分ぐらいで山頂の展望台に到着。チケット売り場の横から入る。建物の前、真ん中にオブジェがあるスペース。
右手に祭壇がある。北に家族を残した人がお正月やお盆にお祈りにやってくるところである。
そしてすでにここから北朝鮮が見えた。川が分かれるところ。水は浅いらしい。砂州が見える。その白くもやがかかった川の向こうに、対岸の風景がみえた。
特別な「国境」がなければ、砂州を観察しにきたようなごくふつうの風景であった。
なにか放送が聞こえる。
いわゆる対南放送?対北放送?らしい。
しかしどうきいても明るいポップス音楽である。なんだか気が抜ける。これじゃあクリスマスにはジングルベルを放送しそうである。すでに緊張緩和か?

建物に入る。すぐ右手でアイスクリームを売っている。さらに気が抜ける。
まあそれはともかく、展望台へ向かう。

途中に「北朝鮮映像室」。人がくるとやるらしい。でもだれもいない。
のぞいていると係員が急にあたふたしだした。こちらもめんどくさいのでやめ。
そのままエスカレーターに乗って展望台に向かう。
そのまえには南北会談の写真が飾られてあった。
これも最近の変化だろか。
展望台に到着。
まるでプラネタリウムや舞台のように、椅子が一方を向いている。 主人公は、舞台の主人公はもちろん、北朝鮮の姿である。
まず備え付けのTVで説明が流れる。みんな座ってじっとTVをみる。
説明が終わると椅子を降り、500ウォンを入れて双眼鏡でながめる。今はけっして自由にいくことができない北朝鮮を。村が見える。人が見える。北朝鮮の人がいる。ふつうの北朝鮮の人が。畑を歩いている。集まっている。緊張感はない。ゆっくりと動いている。

でもいつもこうやってのぞかれているというのはどういうもんだろう?プロバカンダの看板がたくさんあるのだから、南からのぞかれているのは知っているのだろう。でもあんまり気持ちいいものではないだろう。プロバカンダの文句はこの前の南北会談で相当替わったそうである。こんなところまで、南北融和の波がやってきている。

がちゃん、500ウォンがきれた。またつづけて500ウォン玉を投入。
双眼鏡を鳥が横切った。
思わず野鳥の会をする。
そう、鳥だけはこの南北の「国境」を自由に渡れるのである。
対岸の模様を再現したジオラマがある。
ほんと、この国はジオラマが大好きである。
世界ジオラマコンテストがあれば優勝するだろうってぐらい。
ちなみにさらに上の階は外国人用。
でも階段であがらないように。ゆうに2階分はある。
へとへとになって到着。
こちらは下の階とまったくつくりが同じ。まるで既視感(デジャヴ)である。
ただ説明のTVが日本語なだけ。外国人用といってもそれはほぼ日本人用である。
建物の外にでる。
さらに階段をあがる。
ここも展望台になっている。そしてまた双眼鏡が並んでいる。
また500ウォン玉を取り出して、双眼鏡でのぞく。都合3回目。
展望台にきて、今までの人生、これだけ双眼鏡をのぞいたこともないだろう、というぐらいにのぞく。
ここにも売店。韓国ではどこでも売店がある。
ユルムチャを飲みながら北を眺めた。
下に降りる。食堂があり、その入り口にめずらしいものをみかけた。
北朝鮮式の蒸しパン。色はじゃがいも色?おもわず手を出す。
買って下に降りていくと、それはなんだと通りすがりの人がいう。
下には展示館があった。入ってすぐの2階は「統一展示室」。
「統一努力への奇跡」統一に向けての南北の努力のあとが道のように長いパネルにされている。
もちろん、この前の南北会談もさっそくパネルに。この国にしてはすばやい対応である。
部屋の真ん中には朝鮮半島統一地形図。
ボタンを押すとピピピとラインが表示されるやつである。好きなんですけど。

階段を下りて1階。こちらは「北朝鮮展示室」。
そこには北朝鮮のありとあらゆるものが展示されている。まるで北朝鮮博物館みたい。
特産品。酒に電気工具。制服。果ては女性の下着まで。まるで北朝鮮マニアの部屋のようである。
住民の生活から教育制度、組織までパネルで説明されている。
もちろん、金正日の写真もある。
ちなみに我が実父は金正日とよく似ている。おもわず「父」と写真を撮る。
PCも置いてあった。しかし悲しいかな、全部ハングルであった。
一つぐらい日本語のをおいてくれてもいいのに。
奥には「北朝鮮生活体験室」。
手前の左手に学校、右手に部屋の様子を再現。
学校に入って思わず生徒および先生のフリをする。
さらに奥は「統一祈願室」。
訪問者のメッセージが飾られている。
日本の中学生が送った大きなメッセージがででんとはってあった。
ここでは個人の訪問者のメッセージを残すことができる。
これは僕も何か残さなければ。金大中のに負けないぐらいすごいのを、、、

トイレに寄る。
トイレの前には北朝鮮の国鉄全路線が張ってあった。

さらに下に降りる。ちょうどお昼であった。
いったん外にでる。
宣伝放送が聞こえる。一瞬、どちらの放送かわからない。
目の前に鉄条網があった。にわかに南北の現実が見える。

さらに下の階は、北朝鮮の物産を売るお土産物コーナーである。
鉄条網の切れ端が売っていた。しかしこれはまだちっと早いんではないだろうか?まだ現実には鉄条網で閉ざされているのに。
食料品関係が多い。特にお酒。それから麺類。さすがネンミョン(冷麺)の国である。
北朝鮮の切手、イナゴ、アメ、蜂蜜焼酎、くるみを買う。
約2時間。思いのほか長居してしまった。予想よりはるかに面白かったから。
とくに北の人の姿が見えたことが、衝撃だった。

しかし南北が統一してしまったら、ここはどうなるのであろう?
その日がくればここは無用なものになってしまう。
無用になる運命にありながら、思いのほかしっかりした作りに、現実の重みを知らされる。
そのときにまたここを訪れることができるだろうか。
なくなってほしい、という複雑な想いを胸に、展望台をあとにした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日 :2001-06-07

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