しばさきのキムチとバット~日韓野球考・第19回「2007年韓国プロ野球プレビュー」

第19回「2007年韓国プロ野球プレビュー」

まだ暖かくはないけれど、確かに冷たくはない風が野球場に吹き始めると、野球の季節が始まる。これからの6ヶ月間、野球は私達の生活の一部となる。手に汗を握り、大声を張り上げ、涙を流し、歯軋りさえする。野球は人生に似ている。いや、待てよ。逆ではないのか。人生が野球に似ているのではないのか。まぁ、そんなことはどうでもいい。もうすぐプレイボールの時間だ。さぁ、野球場に出かけよう。
おっと、出かける前に、2007年韓国プロ野球の見所をチェックしてみることにしよう!

1>新旧交代に成功した斗山ベアーズに大改造LGツインズ。ソウルのライバル対決はヒートアップ間違いなし!

2006年は1990年の球団創設後、初の最下位に沈んでしまったLGツインズは、現代ユニコーンズから元ツインズのスター選手でもあったキム・ヂェハク監督を呼び戻し、斗山ベアーズからFAとなったエースのパク・ミョンファン投手を"強奪"。メジャーリーグでも活躍したポン・ヂュングン投手、元福岡ダイエーホークスで2003年の日本一にも貢献したアメリカ人助っ人、ペドロ・バルデス外野手も加入。生え抜きスター選手であるイ・ビョンギュ選手がFAで中日ドラゴンズに行ってしまったが、昨シーズンの屈辱を晴らすべく、このオフは大補強に動いた。そんな新戦力を、現代ユニコーンズで4度のチャンピオンに輝いた名将が、どのように使いこなすのかに注目したい。一方、エースを失った斗山ベアーズは昨シーズンから若手選手を積極起用し世代交代を進める。軍隊から中継ぎ投手が何人か帰ってきた程度で、目立った補強には動かなかったものの、そこはキム・ギョンムン監督が若手選手の成長に自信を持っている証拠であろう。ここ数年はソウルの2チームに元気がなく、観客動員の面でも盛り上がらないシーズンが続いていたので、今年は満員の蚕室野球場で熱戦が繰り広げられることを期待したい。

2>野球場も大改造!

1983年のオープン以来、何度か改修・補修工事をしてきた蚕室野球場も、このオフはフィールドを大改装。ダッグアウトとブルペンが拡張され、天然芝も全面張替えされ、土も入れ替えられた。内野のフィールドは水はけが良くなり、赤色がかった色に変更された土と、メジャーリーグの球場でも使用されている芝生の品種である、ケンタッキーブルーグラスとの色のコントラストにも注目したい。フィールドだけではなく、プレーもメジャー級と行きたいところだ。ちなみに前回のレポートで取り上げた「あばら屋」テグ市民球場も穴だらけだった人工芝を張替え、スタンドの一部も改修された。新球場も今年の上半期には具体案が出てくるようである。

3>名門、現代ユニコーンズの売却は・・・

1996年の創設以来、4度の韓国チャンピオンに輝いた名門チーム、現代ユニコーンズが売却問題に揺れている。開幕を控えた今も問題は解決していない。昨年末に親会社の現代グループはユニコーンズの球団支援の打ち切りを決め、今年の年明けに韓国農業協同組合との間で売却交渉がスタート。農協は今年から会社名を英文頭文字のNHにする計画があり、新社名のPR効果を狙ったプロ球団買収で、球団名を『農村愛の野球団』とし、本拠地を水原からソウルのアマチュア専用球場のモクトン球場にすると発表までしたのだが、組合員の農民、農協の監督官庁である政府・農林部、労働組合、世論の反対に遭い挫折。その後も在米同胞の不動産ディベロッパーへの売却も検討されたが、交渉に入る前にディベロッパー側から断られてしまった。ユニコーンズ自体は強豪チームで毎年のように優勝争いをするのだが、人気はさっぱり。1996年から1999年まで本拠地にしていたインチョン市を、全州にあったサンバンウル・レイダースを買収したSKグループに譲り、本拠地をソウルへ移すことを前提として、水原市を一時的に利用してきたので水原でファンに愛されるはずもない。日本のオリックス・バファローズと同じくらい地元のファンの感情を逆なでするような球団に、ファンが球場に足を運ぶわけもなく、2006年度の観客動員は"年間で"12万6千3百85人。一試合平均だとちょうど2,006人。2006年度に平均観客数が2,006人という笑えない状況にあり、筆頭株主であるハイニクス半導体も赤字を垂れ流すだけの球団へ資金を回す余裕がなく、今も売却先を探しているが見つかっていない。とりあえず、開幕戦は現代ユニコーンズで迎えることになるが、シーズン途中でも売却先が見つかれば即売却される運命にある。過去にも、1985年の三美スーパースターズ→チョンボ・ピントス、2001年のヘテ・タイガース→キア・タイガースというシーズン途中での売却はあったのだが、ユニコーンズの運命やいかに・・・。

4>読売戦中継に負けるな!

日本でもNHKがメジャーリーグ中継ばかりに力を入れるせいで国内プロ野球が盛り上がらなくなっているという指摘があるが、韓国プロ野球はメジャーリーグだけではなく、日本プロ野球とも戦っている。メジャーリーグ中継は、いくらがんばっても時差の関係上、午前中から昼過ぎで中継は終わるが、イ・スンヨプ選手(読売)、イ・ビョンギュ選手(中日)という元・韓国プロ野球のスター選手が出場する日本プロ野球の中継放送は韓国プロ野球の中継時間とバッチリ重なってしまう。2006年シーズンも8月にハンファ・イーグルスのベテラン投手が韓国プロ野球史上初の200勝投手となるかという大記録が懸かった試合の放映権を持っていたSBS(ソウル放送)が、イ・スンヨプ選手が出場する「優勝争いから見放されて下位に沈む読売ジャイアンツ戦」を中継するために、ハンファの試合を録画中継、読売戦を生中継で放送するという事件が起きた。昨年、日本では読売戦の視聴率が低すぎて、後半戦の多くの試合で地上波のゴールデンタイムの中継にスポンサーが付かず、深夜放送に切り替えられるか、中継放送そのものがキャンセルされたため、『世界中で読売戦を生中継で楽しめる場所は韓国だけ』と言われたのだが、韓国での読売戦人気は私達の想像よりも高い。日本の地方都市では『お茶の間の巨人』の人気が依然として高いものがあるが、変化は確実に起きており、札幌でさえ『お茶の間の巨人よりも地元のファイターズ』という時代になったのだが、韓国プロ野球も読売の電波侵略に負けないで欲しいものだ。ファンの愛情に応えられるのは『お茶の間の巨人』ではなく『地元チーム』である。
韓国プロ野球の開幕戦は4月6日(金)。ソウルではLGツインズ対キア・タイガースの試合が18:30から行われる。史上初のナイター開幕戦である。ソウルへ旅行する予定がある人は、足を運んでみるといい。きっと観光地では味わえないソウルを楽しむことができるはずである。ちなみに、試合日程や開始時間は韓国野球委員会ホームページ(http://www.koreabaseball.com/)でチェックできるが、ホテルのフロントで聞いてみると親切に教えてくれるはずである。日本から一番近い海外プロ野球に熱い声援をお願いします!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2007-04-05

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