伏日に食べる参鶏湯(サムゲタン)

今日はサムゲタンの日! ガッツリスタミナをつけましょう!

アンニョンハセヨ、プサンナビです。今日7月15日は伏日(ポンナル)。全国でいっせいにサムゲタン(若鶏の鍋)や、ポシンタン(犬肉の鍋)を食べる真夏のイベントデーです。感覚的には日本で土用の丑の日にウナギを食べるのと同じようなもの。夏バテを防ぐために、栄養のあるものを食べて暑さを乗り切ろうという意味が込められています。去年の伏日にはポシンタンについての記事を書きましたので、今年は伏日の由来にも踏み込みつつ、サムゲタンのほうに焦点を当ててみたいと思います。
伏日とは
まず伏日について説明しておきましょう。伏日とは夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日(初伏・チョボク)、4度目の庚の日(中伏・チュンボク)、立秋後初めての庚の日(末伏・マルボク)をさし、1年に3度あるのでこれを総称して三伏(サムボク)とも呼びます。日付は毎年少しずつ変わり、2005年の場合は初伏が7月15日、中伏が7月25日、末伏が8月14日となっています。
伏日と呼ばれる理由
伏日という呼び名は陰陽五行説に由来します。伏日を迎える7月中旬から8月中旬にかけては夏のもっとも暑い時期にあたり、陰陽説では「陽」の力が、五行説では「火」の力が増大する時期と考えられてきました。陰陽説にせよ、五行説にせよ、すべてがバランスのよい状態にあるのが望ましく、何かひとつの力が突出した状況というのは理想的ではありません。

<陰陽説で考えると>
この世の万物を「陰」と「陽」の2つに分類する考え方。真夏は「陽」の力が強く、「陰」の力は押さえつけられて地表付近に伏していると考えます。「陰」の力が増大すると病気の鬼神が影響力を強めるので、人間は体調を崩しやすくなります。

<五行説で考えると>
森羅万象を木火土金水の五行に分類する考え方。それぞれが支えあい、また反発しあうと考えられており、その力関係は図の通りです。「火」の力が強大になることによって、力が弱まってしまうのは「金」。五行で「金」にあたる庚の日は、「火」の影響をもっとも受ける日なので充分に注意しなければなりません。

以上2つの理由から、真夏に迎える庚の日は、陰陽五行のバランスが崩れるもっとも危険な日であると考えられました。陰の力が地表に伏している状態から「伏日」と呼ばれるようになり、もっとも体調管理が重要な日として広く知られるようになったそうです。
相生……木から火が、火から土が、土から金が、金から水が、水から木が生じたという関係。木が燃えて火になり、火が燃えて灰(土)になるというように、元を同じくするため相性がよいとされる。
相剋……木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に剋(勝)つという関係。火に水をかけると消えてしまい、火の中に金属を入れると溶けてしまう。悪い影響を与えてしまうので相性は悪いとされる。
伏日にスタミナ料理を食べる理由
伏日は盛夏の中でももっとも陰陽五行のバランスが崩れやすい日。それは人間の身体にも悪影響を及ぼしやすい日ということでもあります。これに対抗する最良の対処法が、弱まった「金」の力を増大させること。すなわち、五行の「金」に相当する食物を摂取し、身体の中に「金」の力を蓄えることがもっともよいと考えられました。

一覧表をみてわかるように、「金」に該当する食物には「犬」「葱」などがあります。また味付けは「辛」いものが「金」に相当します。伏日を代表する料理のポシンタン(朝鮮時代の呼び名は狗醤)は犬肉にネギを加え、唐辛子で辛く味付けた料理のこと。伏日に食べる料理としてはもっともふさわしい料理であったことがよくわかります。

伏日にポシンタンを食べる風習が定着し、その後、犬肉を好まない人が牛肉で代用した料理(ユッケジャン)を作るなど、少しずつスタイルが変わってきます。陰陽五行の考え方にのっとった食物を摂取するということから、健康によいものを食べればよいというように変化し、現在のような風習に至ったと考えられます。現在では、ポシンタン、ユッケジャン、サムゲタン、ペクスク、タッカンマリなどの料理が伏日を代表する料理として広く食べられています。
サムゲタンを食べよう
伏日はあくまでもポシンタンという人も少なくないですが、現在の主流はやはりサムゲタンのほうでしょう。伏日になると、全国のサムゲタン専門店の前に大行列ができます。サムゲタンは若鶏のお腹にモチ米や、朝鮮人参、ナツメ、ニンニク、栗などの漢方食材を詰め込んだ鍋料理。朝鮮人参の「参」の字と、若鶏の「鶏」の字をとって「参鶏湯(サムゲタン)」と名付けられました。
▲お昼時の大行列 

▲お昼時の大行列 

▲配達もあります

▲配達もあります

唐辛子が入らないので、辛いものが苦手な人でも平気。若鶏とはいえ1匹だとちょっと多いという方には、若鶏を半分使用したパンゲタン(半鶏湯)をオススメします。より強力な薬効を求められる方には、烏骨鶏を使用したオゴルゲタン(烏骨鶏湯)もあります。最近では漢方食材を多めにいれた漢方サムゲタンも登場しており、一口にサムゲタンといっても、種類は意外に豊富です。
サムゲタンの歴史をさかのぼると
サムゲタンがいつ頃から食べられ始めたのかを知る明確な資料はありませんが、朝鮮時代の料理書に比較的よく似た料理が記載されています。1670年頃に書かれた『飲食知味法』や、1776年に書かれた『増補山林経済』に書かれているヨンゲチム(軟鶏蒸)という料理は、若鶏のお腹に紫蘇、ネギ、ニラなどの香辛野菜を詰め込んだもの。朝鮮人参やもち米こそ入っていませんが、こうした調理法が後々サムゲタンに進化していったのではないかと推測されています。
▲海東ヘムルタンのあわびサムゲタン

▲海東ヘムルタンのあわびサムゲタン

釜山でサムゲタンを食べるには
一般の食堂でも稀に出すところがありますが、基本的には専門店で食べるメニューです。プサンナビでは南浦洞にあるソウルサムゲタン、 大宮サムゲタン、ユジョンサムゲタン。釜山駅にある古宮サムゲタンを紹介しております。また西面の海東ヘムルタンは海鮮料理の専門店でありますが、サムゲタンも人気メニューに数えられています。このほかにも専門店はたくさんあるので、美味しいお店を探してみてください。
伏日の日はみんながサムゲタンを食べにいくので、食事時は店が大混雑になります。ゆっくりと食事を楽しみたい方は時間をずらしていかれたほうがよいでしょう。逆に、伏日ならではの興奮した雰囲気を味わいたい方は、行列がピークとなる正午過ぎを目指すのも悪くありません。年に3度のイベントデー。参加するだけで、夏バテもふっとぶ強力なエネルギーをもらうことができるでしょう。以上、プサンナビでした。
関連タグ:サンゲタンチョボッ初伏中伏末伏

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2005-07-15

ページTOPへ▲

その他の記事を見る