谷みつのソウル特派員レポート・第2回「ソウルでバスに乗れば」

ソウルの市民の利用するバスには「座席バス」「一般バス」「マウル(村)バス」の3つがある。「座席バス」「マウルバス」についてはまた別の機会に話をすることにして、今回は「一般バス」について話をしたいと思う。
ソウルのバス停には時刻表はなく、バス停で待っていればバスが来る。そのため、バスは来るときにはたくさん来るが、来ないときには全く来ない。待っていたバスが来ても、油断してはいけない。バスがバス停の前に確実に止まるということはあまりなく、バス停の付近一帯がすべてバス停なので、バスが止まったらバスに走りよって乗りこまなくてはいけない。
一般バスは『ひと乗り』なんと500ウォン(約50円)、始点から終点まで乗っても500ウォン。バスは、前乗り、後ろ降りで、乗車時に500ウォンを支払えばよい。
やっとバスに乗れても、安心できないのがソウルのバスである。アジョッシ(おじさん)、たまにアジュンマ(おばさん)の運転手もいるが、彼、彼女の運転は『神業』だからだ。 車間距離はあまり関係ないらしく、前を行くバスや自動車との車間距離は、計ったことはないけれど、10センチくらいではないだろうか。それにスピードを出すわ出すわ。カーブも信号もお構いなし。道を縫うようにして走るバスの運転技術は、きっとどの国にも負けないだろう。おかげで急ブレーキの回数も多い。だから、バスの中で立っている人は吊革につかまり、足をハの時に広げてふん張っていなければいけない。それに、座っている人も手すりにつかまっていなければ座席からは振り落とされてしまうだろう。気を抜くと大変なことになり、私は一度急ブレーキのために、バスの中で前に転ぶのならまだしも後ろに転んでしまってまるで亀のようにバタバタなってしまった。おかげでバスを降りるまでの数分間、どんなに恥ずかしかったことだろう。
また、ソウルの道はよく渋滞しており、バスに乗っていて渋滞に巻き込まれると災いである。びくともしないバスの中で、ひたすら動くまで待っていなければいけない。
こんなあまりいいことがなさそうなソウルのバスなのに、私の交通手段のメインはバスである。ガンガンに揺られ、事故が起きやしないか心配し、渋滞に巻き込まれるとバスの中でずっと待っていなければいけないけれど、それが実は楽しかったりするからだ。バスが揺れれば揺れるほど日本のおとなしいバスが懐かしい一方で、「私は今ソウルにいるんだ」と実感できる。それに車窓から見える、市場で働いている人たち、果物をリヤカーに乗せて売っているアッジョッシ(おじさん)やアジュンマ(おばさん)。流行りの服に身を包んだ若者たち。渋滞に巻き込まれても、いくら見ていても飽きることはないソウルの町並みを見ていると、時間もあっという間に過ぎていく。それに今の季節は、窓から入ってくる風がとても心地良く、一度バスに乗ると、このままずっと終点まで乗っていたくなってしまう。
ソウルに慣れないと、ほとんどの路線で車内案内が韓国語の一般バスに乗るのは難しいと思う。でもソウルに興味のある人たちには機会があればぜひこのバスに乗り、ソウルの新しい楽しみ方を発見して欲しい。
ちなみにわたし(^^)のオススメは48番バス。ロッテ百貨店の向かい側にある韓国通信社前から、東大門市場の「デザイナーズクラブ」「ミリオレ」「ドヴタ」前まで。所用時間は約15~20分です(ただし、渋滞に巻き込まれなければ)。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2000-05-20

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