谷みつのソウル特派員レポート・第10回「キルボード」

「キル・ボード」 何の意味だか分かりますか?
「キル・ボード」とは韓国語の『キル(路)』とアメリカのCDチャート『ビル・ボード』の「ボード」から言葉を取ったコング・リッシュ(韓国と英語を混ぜた造語)なのです。
韓国には合法か不法かわからないけど、流行のポップスを集めたカセットや、歌手のベスト盤をコピーしたカセットが2500ウォン(250円)前後で、なんと道端の屋台で売られているのである。
カセットは、韓国の人気歌手だけでなく、韓国でも人気の『X-Japan』や『Speed』『Globe』などの日本の歌手を集めたものから、『リッキー・マーティン』『マライア・キャリー』などの洋楽まで幅広くコピー(?)されている。
このカセット屋台が一番多く見られるのがソウルのメインストリート『鐘路』。鐘路の1街から3街まで100mおきぐらいにカセット屋台が出ていて、屋台からはハヤリの歌がガンガン鳴らされている。
今の鍾路なら1街から3街までどこへ行ってもチョ・ソンモの『アシナヨ』歌が聞こえる。このため、あまり、チョ・ソンモのことが好きではない私が「聞きたくないな」と思っても『アシナヨ』がどこからともなく、マインド・コントロールのように流れて来るのだ。そして「もうこれ以上『アシナヨ』なんてぜったい聞きたくない!!」と髪の毛をかきむしっている頃には『アシナヨ』のメロディーが思わず口からついて流れ、その日1日何をしてても頭の中は『アシナヨ』という恐ろしい現象を引き起こすのである。
この鍾路のカセット屋台ではどんな歌でも流してくれるのではなく、一番流行っている歌しか流してくれない(もちろん流される音楽が屋台によって違ったりするけれど)。だから、鍾路の『キル(路)』で流されている音楽は流行の音楽ということで、これを『ビル・ボード』の音楽チャートに引っかけ「キル・ボード」と言うのである。テレビを見なくても、流行の音楽が道を歩いていると分かるなんて、さすが韓国(何がさすがだかわかんないけれど……)。
このカセット屋台で歌を流すと言う事の影響力は本当にすごいみたい。ある曲を流したら、その曲が入っているカセットの売り上げが伸び、この偽者カセットを買うことに留まらず、CDショップで本物のCDやカセット購入にも結びついているよう。だから、ウソかホントか分からないけれど、レコード会社の人がこのカセット屋台に「うちの歌手の音楽を流して下さい」と新曲を持って現れるとか。
鍾路だけではなく、明洞、新村、南大門、東大門、いたるところでこのカセット屋台を見る事が出来る。でも「キル・ボード」のチャートは場所によって少しずつ違うみたいで、鍾路や明洞といった中高生が集まる場所ではテクノなどの若い歌手の曲だけど、やっぱり江南方面では大人っぽい曲。私の大好きなイム・ジェボンのカセットテープも彼のニュー・アルバムが出てすぐに、江南で偽物カセットテープになって売られていた。もちろん即買い。
こうやって買ったカセットテープは韓国へ来てから10本を下らず、韓国人の友達も驚くほどの流行歌通になってしまった。ちなみに、私にはあまり効果が無かったけれど、流行歌通の友達を見ていると、語学習得には音楽を聴き、歌詞を覚える事がすごくいいみたい。
偽物のわりには音も良く、新曲がいっぱいで安いカセット屋台のカセットテープ達。 韓国音楽生活をするためには、欠かせないアイテムの1つなり。

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記事登録日:2000-10-30

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