谷みつのソウル特派員レポート・第14回「湯気立つポジャンマチャ」

ソウルの最低気温が、マイナス18度を越える中、唯一活気があるのが『ボジャンマチャ(屋台)』。1年を通しあるのはあるのだが、特に増えるのが冬なのだ。『ポジャンマチャ』が増えて行く姿を見ると「韓国にも冬がやって来たな」とつくづく感じる。
『おでん』や『トッポッキ』『プンオパン』『ホットック』などなど、そしてソジュ(焼酎)を飲ましてくれる日本で一般的に考えられている『ポジャンマチャ』まで。マイナスを越えるソウルのいたるところから、『ポジャンマチャ』が温かい湯気を立てて寒さに震える私たちを招き入れてくれる。
『おでん』は日本のおでんと少し違い、出汁(だし)はうどん出汁に近い。具はほとんどがさつま揚げ状の天ぷらだ。それをポジャンマチャの前に立ち、醤油ベースの漬け汁に付けながら食べる。何てことない天ぷらなのに、寒い中外で、その上立って食べるとどうしてこんなに美味しいんだろう。一本、500ウォン(50円)くらい。
『トッポッキ』コチュジャン(からし味噌)と砂糖と餅での構成(店によっては秘伝の隠し味が)。とっても辛く、ほのかに甘い。熱さにフーフーしながら食べると、今度は辛さにフーフー。『トッポッキ』はサツマイモの天ぷらと一緒に食べるともっともっと美味しい。『トッポッキ』のコチュジャンをサツマイモの天ぷらに付けながら食べるのだ。絶品としか言いようが……。
男女を問わず人気の『トッポッキ』だけど、特に女の子には大人気。大学の近くの『トッポッキ屋』には常に女学生達の美味しそうに『トッポッキ』をほおばる姿を見る事が出来る。梨花女子大学近くの路地に行って御覧あれ。一皿、1000ウォン(100円)ほど。
『プンオパン』は日本のタイヤキそのもの。でも、皮(??)の部分が少し塩っ辛く、全体がパリパリと香ばしい。餡子とのコンビ・ネーションも絶妙。そして何といっても、驚きなのが価格である。4個で1000ウォン。日本でタイヤキ1個が150円くらいなのを見た時、韓国に比べ格段に高すぎて買えなかった……。
徳寿宮の大門に向かって左側に『クオッパン』を売っている店がある。『プンオパン』を食べながら徳寿宮の見学はいかがかな。
『ホットック』この名前を聞いただけでも涎(よだれ)がタラタラ。冬の王様『ホットック』。「冬になってから『ホットック』食べた?」と友達と聞き合うくらい、冬の代名詞である。
『ホットック』は生地の種類もいろいろ、具の種類もいろいろだけど、大部分、パンと餅のちょうど中間みたいな生地の中に、砂糖やピーナッツなどの具を入れて焼いたものや、餡子状のものを入れて焼いたものが主流のよう。
生地に具をつめて鉄板の上で焼くと、生地がプクーっと膨らんでゆく。それをアジュンマが専用の道具を使ってホットケーキ状に整えてゆくのだ。そして出来立てのそれを名刺大にきった厚紙で持って食べる。一口食べると、中からは熱々の湯気と溶けた砂糖がトローッと出てくる。口の中を熱さでフガフガ言わせながら、溶けた砂糖をこぼさないで食べるのは至難の業である。私は一度失敗し、今でもスエードの靴に砂糖の染み付いていて、その染みを見る度に『ホットック』が食べたくなってしまう。
仁寺洞のちょうど真ん中のあたりに、一年を通じてこの『ホットック』を売っている店がある。いつも長蛇の列が。一個、500ウォン。
ソウルの極寒はともすると耐え難く辛いだけの物になってしまうけれど、それを楽しむすべを韓国人は知っているような気がする。寒い中、『ポジャンマチャ』の暖かい食べ物を食べると体も心も暖かく、冷たい風さえも心地良い。
この時期にしか味わえない韓国の味、ぜひ寒さの中で食べてみてほしい。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2001-01-26

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