谷みつのソウル特派員レポート・第16回「ババンババンバンバン、あ~い~湯だな」

肩までお湯に使って、ぐーっと伸びをしたい。
これが私の今のささやかな夢。
というと、まるで私がお風呂に全然入っていなくて、垢まみれ姿を想像する人もいるかもしれないけれど、体は毎日洗っています。シャワーで。
一般住宅はどうなのかは解らないけれど、概して韓国の下宿には浴槽が無い。 私はこれまで韓国内で3度引越しをしてけれど、どの下宿にも無かったし、友達の下宿にもあった試しが無い。ワンルームにおいてもしかり。下宿のお風呂場の構造がどうなっているかと言うと、ホテルの浴室に浴槽が無い状態。(ちなみに、今の私の下宿には洗面台も無い。洋式便座とシャワーとカランだけ。)
今はだいぶ慣れたけれど、韓国に来た1、2ヵ月、お風呂に入れずにイライラの毎日だった。そして「お風呂に入りたい!!」この気持ちがどうしても押さえ切れず、意を決して行ったのが、温泉マークの『モギョク・タン』。(韓国では、お風呂屋さんの事を『モギョク(沐浴)・タン(湯)』又は『サウナ』と呼ぶ)
私は、こう見えても(ぜったいに見えないし、誰も信じないけれど)神経質。日本にいた時は、一度も『健康ランド』といった大衆浴場には行った事がなかった。 それに友達と温泉に行く事もあまり好きではない性分だったのである。(谷みつは体に自信が無いのだろう、と思っているあなた正解です)
でも、でも、どうしてもお風呂に入りたいの!!!
そして見つけた『モギョク・タン』は、地上何十階もあるビルの地下一階にあるお風呂屋さん。 地上は、オフィス・テルのよう。地下に向かう階段を降りて行くと、窓口がありそこで入浴チケットを購入。左側が男風呂、右側が女風呂。
そして 扉代わりの暖簾をくぐったとたん、私の前に現れた光景は、全裸で闊歩する人人人……。たとえお風呂屋さんであっても、たとえ同性であっても、タオルで前を隠す日本人にとって、この堂々と全裸で歩く姿に初めは度肝を抜かれることだろう(男風呂でも同じような光景らしい)。
そして次ぎ、浴室にはもっとすごい光景が。
風呂場ではアジュンマ(おばさんが)寝ている、浴槽では泳いでいる、サウナ室では体操している……。
そんな中に混じって私も体を洗っていると、どこからともなく甘い香りが。香りの方に顔を向けると、なんとイチゴ果実入りのヨーグルトでパックしているアジュンマが。もう一方ではヤクルトで、もう一方では牛乳で。それも顔だけじゃなく、身体全体をパックしている。どうりで韓国女性の肌はツルツルな訳です。
身体を洗い終わって温水浴槽に入ると、隣の冷水浴槽では大きな水飛沫を上げて水泳をしているアジュンマを発見。夏目漱石がこの光景を見るとさぞ羨ましがった事でしょうに。
室温70度のサウナ室では、平気な顔をして熱さを満喫(?)。その上に温まった体で体操までしている。私は1分と我慢できずに出て来たというのに。 そして浴室では疲れた体を浴槽の淵に横たえる、アジュンマ・アジュンマ・アジュンマ。
クラクラしてきたのは、お風呂の熱さばかりではなさそう……。
それにしてもみんな、ホントにお風呂を楽しんでいる。見知らぬ同士でも垢を擦りあったり、世間話をしたり、よその子供同士も仲良く遊んでいる光景にはほのぼのさせられる。 この人たちの前で、同じ女性なのに体を隠している事の方が恥かしくさえ感じられる。 あー、韓国のお風呂は体も心も、極楽・極楽。
お風呂屋さん帰りの暖まった体には、冬のソウルの寒風がホント気持ちいい。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2001-03-12

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