谷みつのソウル特派員レポート・第18回「『ポン タン心』は『シンスン センスン』」

ボーッと惚けている私を見て、韓国人の友人が「ポン タッソ?」と聞いてきた。
ムム、『ポン タダ』。
『ポン』は日本語で「春」。『タダ』は「燃える・焼ける・焦げる」や「乗る・滑る」などなど意味があるけど、『ポン タダ』ってどういう事?
辞書によると『ポン タダ』は「春に食欲が無くな体が弱る」と載っている。が、友人の話を聞いているとこれだけではなく「恋愛したーい」という気持ちまでも意味するらしい(注:この解釈は一般的ではない場合があります)。特に、女性がこの春の季節『ポン タダ』になるんだって。(男性は秋にタダ。)
なるほどね。それは一理あるかもしれない。寒さが厳しい韓国在住者にとって待ちに待っていた暖かい春、そして、心までも明るくしてくれる美しく咲き誇ったレンギョウやツツジの黄色や紫の色。そして、店先に並んだパステルカラーの春の服。これだけの環境が揃うと「ナンカいい出会いがありそう」とか「彼と一緒にお花見したいな」という気持ちが起きるのは当然(?)。でも、そのせいで私が惚けていた訳ではないのだけど。
いやー、でも本当に「恋したい~」と言う気持ちを抜きにして、春になったのだから何かいい事が有りそう、という期待が根拠も無く湧いてくるから不思議、不思議。
こんな心は『シンスン センスン』。
『シンスン センスン』とはそわそわしたり、うきうきしたりと心が浮いて落ち着かないこと。発音的にもリズミカルで、発音からもうきうきした気持ちが伝わってきそうだ。
私にとって韓国の春は今年で3度目なのだが、今年ほどこの『シンスン センスン』という言葉を多く聞いた春は初めて。やっぱり、30余年ぶりの寒波の後の春だけあって、みんなの春のうきうき具合も例年以上なのかな。
こんな陽気な春も毎日とは続かず、特に韓国南部では1週間に何日かは雨だし、北部でも突然曇ったり風が強く吹いたりして、変わり易い天候である。
そんな天気を韓国では『変わり易いのは女心と春の空』。
「え~っ、変わり易いのは男心でしょう。」と反論した私に、韓国男性は口を揃え「変わり易いのは女心だ」。そして韓国女性は「変わり易いのはもちろん男心」。
どの国も、天候と異性の心を読むのには苦労してるみたいだな……。
閑話休題。
『シンスン センスン』の心には、食欲を鈍化させる魔法があるみたい。季節の変わり目ということもあるのだろうか。こんな私でもあまり食欲が出ず(友人曰く「嘘つくな」)、元気もいつもの3分の2ほど。
そんな時には、市場に行ってワラビや蕗の薹などの春の山菜をたくさん買い、ビビンパにして食べると元気が出るそうだ。うーん、聞いただけでも涎が出そお。季節の物から元気を貰うって体にも心にも良さそうだね。
さあ、『ポン タダ』してる心を安めに市場に出発なのだ~。
参考資料:朝鮮語事典(小学館発行)

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2001-04-25

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