しばさきのキムチとバット~日韓野球考・第1回「ガイドブック」

イチロー選手やパク・チャンホ選手など、アメリカで活躍するアジア人選手が増え、日本・韓国共にアメリカのメジャーリーグに対する関心が高くなった。アメリカ生まれのスポーツが日本で、そして韓国で、それぞれ『野球』、『ヤグ』として育ち、アメリカへ選手を『輸出』するまでになったという時代背景から、日本でも韓国でも各種メディアでは対アメリカという視点での比較が盛んに行われるようになった。
しかしながら日本と韓国との比較は、まださほど盛んではない。日本プロ野球と韓国プロヤグという座標軸は、例えて言うと漬け物のキムチと沢庵のようである。同じ漬け物であるが味はまったく違う。しかしながら、それぞれの味を楽しむことはとても贅沢であり楽しい。そんな能書きは兎も角、日本と韓国のプロ野球を楽しむためのコラ ムを今後書いていきたいと思う。記念すべき第一回目は球場で売っているものの中で各球団のガイドブックをテーマとする。
チケットを買ってゲートを潜る。階段を上っていくにつれフィールドが見えてくる。心が弾む瞬間。野球場に行ったことがある人ならこの気持ちが分かると思う。そんな心理状態につけ込むように、アメリカでも日本でも韓国でも、スタンドの座席に着く までに様々なものが売られているが、まず目に付くものとしてアメリカではプログラムがある。 球場によって違いはあるが、地元チームの選手紹介が掲載されている月刊の雑誌にメンバー表とスコアカードに鉛筆が付いて3~5ドル。各ゲート付近に山積みにされ、オジサンが『プログラム!!プログラム!!』と声を張り上げている。この手のプログラム売りは日本や韓国の球場ではあまり目にしない。これはトレードやマイナーとメジャーの選手入れ替えが盛んなアメリカでは4月に買ったプログラムと8月に買ったプログラムとでは載っている選手がまったく違うことがあるため、行く度にプログラムを買うファンが多いからである。 アメリカでも4月の開幕に合わせて写真付きの選手紹介が主であるイヤーブックや記録やチームの歴史が満載されたメディアガイドなどの年鑑が発行されるが、どちらかというとプログラムを毎回買う方が一般的である。
毎月更新されたプログラムが派手に売られているわけではないが、日本と韓国でも年一回、4月の開幕にイヤーブックが各球団から発行されている。価格は日本ではだいたい1000円前後、韓国では2000~3000ウォン程度。内容は日本語と韓国語の違いくらいで、選手紹介、キャラクターグッズやチケット販売の案内などの内容とレイアウトもよく似ている。 初めて韓国の球団のイヤーブックを手にしたのは1997年のサムスンライオンズのもので、普段目にする日本のイヤーブックと本当にそっくりで驚いたのを覚えている。その中で何より印象的だったのが、アメリカのイヤーブックのメンバー紹介は『スター選手、他の選手、監督、コーチ、オーナー、その他スタッフ』の順でされていることが多いが、韓国では日本と同じく『オーナー、監督、コーチ、選手』の順となるところ。ファンが何を偉いと感じるかを端的に表しているような気がする。こんなところにも年功序列の韓国の儒教文化を感じるのが楽しい。 そんなイヤーブックを私は韓国に観戦に行くと必ず買うようにしているが、日本のイヤーブックに比べると、あまり売れていないようである。韓国のファンが買っているのをあまり目にしたことはないし、買うと必ず売店の店員が『やっと売れた』という表情を浮かべている。しかし、売れていないものの各球団の工夫は見られる。
昨年のLGツインズのものは前からページをめくるとイヤーブック、後ろからめくると球団10周年史という凝った作りになっていたし、サムスンライオンズは変形システム手帳のような感じで、選手名鑑と手帳が一体となったような作りで、日本でもアメリカでもないような作りが面白かった。 今年も観戦にいく予定だが、 各チームがどのようなイヤーブックを発行しているのかが楽しみでならない。韓国旅行中にプロ野球観戦の機会があれば、お土産にイヤーブックを買ってみると良いだろう。最近、韓国プロ野球から海外へ行く選手も多いので、ひょっとすると、近い将来、その中に載っている選手を日本やアメリカに行った時にはお宝に化けるかも 知れない。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2001-09-12

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