しばさきのキムチとバット~日韓野球考・第4回「2001韓国野球観戦記(2)」

9月2日(日) ロッテジャイアンツ対ハンファ(韓火)イーグルス@釜山サジク野球場(ソウルナビに釜山のレポートもどうかと思うが、ソウルとの違いを見るには良い比較対象なので紹介させていただく。)
試合開始は2時。10時過ぎの便を捕まえたいところである。ソウルキンポ空港に着いたのが9時半をまわったころ。大韓航空のカウンターに行くと10時00分発の釜山行きがあるという。料金は62,500ウォン。少し高いと思ったが、日曜日だからかと思って乗り込むことにした。座席番号が妙に若い。8−A。エコノミークラスを探すと一桁の番号なんてない。ひょっとしてビジネスクラス?その通りであった。後で見たら、料金表では繁忙期料金だったから、ビジネスクラスに空きがあったから入れられたのか、ビジネスクラスの料金で高かったのか不明だが、去年乗った鉄道のムグンファ号立ち席よりは良い。離陸前には寝息を立てていた。
プサン市内へ出てから、すぐに球場へ。時間は0時50分。入場料はソウルと同じ。今年からスコアボードと売店の一部を改装したサジク野球場は、日本の横浜スタジアムをモデルに作られた3万人収容のスタジアム。フィールドは人工芝。9月といっても、まだ夏である。照り返しが眩しい。観客の出足も良い(翌日の新聞には、アメリカと同じように16,633人と実数が出ていたが、水増しの概数で発表する日本では23,000人と発表されていてもおかしくない)。地元ロッテにプレーオフ進出の望みが出てきた上に、主砲のホセ選手のホームラン王争いもあり盛り上がってきたのだろう。我々は一塁側スタンドの最前列のロッテ応援団ステージ前に陣取る。背中に背番号と選手名が入ったシャツを着ていたので、まわりの少年ファン達に色々と話 しかけられる。『日本から来たの?イチローは知ってるよ。サムスンのイ・スンヨプが阪神に行くってスポーツ新聞に出てるけど、本当?』釜山訛があって聞き取りにくいが、一生懸命に野球談議の花に水をやる。「怪我でピッチャーが何人か欠けているけど、今日投げるヨム・ジョンソクは良いピッチャーだよ。プレーオフに行くために頑張って欲しい。あと、一番のキム・ジュチャン。ルーキーだけど大活躍してる・・・」と説明しながら、スタメンを記入しているスコアブックを興味深げに見ている。
そこに突然、ハンファイーグルスの選手がポジションに就き、アンパイアも散った。ロッテの打者も打席に向かう。スタンドも応援に使用する風船を叩き出す。時計は1時半。『試合開始?当日になって、いきなり開催球場が変更になったり、テレビ放送の都合で開始時間が変わるという事件に遭遇したって話も聞いたことがある。ひょっとして・・・』。開始予定まで30分はあるはず。それに冷静に考えると国歌斉唱もしていないし、ビジターチームのハンファは先攻のはずだ。再度、後ろの小学生軍団が教えてくれる。「映画の撮影だよ。スコアボードに韓日共同製作映画って案内が出ているよ」。面白いこともあるものだ。
2時。今度は本当のプレイボール。1回は両チームとも無得点。2回、ハンファのデービス選手がホームランなどで3点を先制。しかし、スタンドは元気いっぱい。なにしろ、今日の座席は応援団ステージ前なので、チアリーダーの脚の間から投手が投げ、脚を通って打者が見えるという状態である。釜山っ子の大歓声が響いていく。ところが、5回にも再びデービス選手に3ランホームランを浴び、ロッテは6点リードされる。
しかし、ロッテはついに反撃開始。6回。ホセ選手のホームランにスタンドは揺れる。『釜山カルメギ(カモメ)』という釜山地方の歌の大合唱にウェーブも起こる。ソウルと違いビジターチームのファンは皆無なので、ウェーブは何周も回る。さらに7番の外国人ヤン選手もタイムリー2塁打でもう一点。今度は『釜山港へ帰れ』の大合唱。総立ちで手には新聞紙を持って振り回している。雰囲気はまったく違うが、地元一色の盛り上がりはメジャーリーグ並である。
結局、試合は9回にデービス選手のこの日3本目のホームランが飛び出して、ロッテは反撃及ばず。10対4で終了。試合後、ネット裏スタンド下にあるロッテの球団事務所に行くと、昨年訪れた際に球場内を案内していただいたチェ・スンハ運営チーム長(日本で言う球団代表に当たる)が迎えてくれた。「試合中に(今年から設置した)スコアボードのカラービジョンに映される映像が事務所にあるモニターテレビに映るんだ。見ると去年も見た顔が映ってるじゃないか。よく来たね。ところで今日は他のチームの結果も気になるよ。何しろ4位から8位までプレーオフ圏内だからね。」そう言って、話もそこそこに周りの球団職員に結果を聞き回っていた。秋は近い。ロッテにとって実りの秋になるのだろうか。2日後のソウルでのLG戦も応援に行くことを告げ、球団事務所を後にした。球場の関係者専用出口を出ると、選手が子供達にサイン責めにあっていた。

釜山サジク野球場アゴ&アシetcメモ

アシはプサン市内の繁華街『西面(ソミョン)』のロッテ百貨店前からバスが出ている(600ウォン)。タクシーでも3~4000ウォン程度。時間は道路事情によるが20分くらい。
アゴはソウルと違って洗練されたものはないが、この方が韓国の球場らしい。トッポッキ(2000ウォン)、インスタントラーメン(1200ウォン)、海苔巻き(1000ウォン)。変わったところでは蚕の幼虫の煮物であるポンテギ(2000ウォン)。試合内容によりラーメンは飛び道具と化すこともある。熱いファンが多い のも特徴だ。
入場料はソウルと同じく、指定席(8000ウォン)と一般席(5000ウォン)の2種類しかない。応援に使うのは電動ポンプで膨らましてくれる風船(2000ウォン)。そして新聞紙も欠かせない。新聞紙を振って『釜山カルメギ(カモメ)』や『釜山港へ帰れ』を熱唱する。応援スタイルはソウルのチームに比べてバンカラでチアリーダーのお姉さま方の化粧もかなり濃い(へそにまでピアスをしている強者もいる)。また、ファウルボールは子供にあげるのがルール。大人が取ると「アジュラ、アジュラ!!(釜山の方言で子供の意)」とスタンド全体から野次られる。野次は近の子供に渡すまで続く。なかなか楽しい習わしである。
キャラクターグッズ店は一塁側入場ゲートを入るとすぐにある。帽子(9000ウォン)、ジャンパー(45000ウォン)、Tシャツ(10000ウォン)などがあるが、製造業者がソウルにあるため、ソウルでの試合の方が種類もサイズも豊富である。
ソウルのチャムシル球場と釜山のサジク球場は東京ドームと甲子園球場の違いと同じようなものと考えていただくと解り良い。熱くなりたいファンはこちらの方が『はまる』と思う。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2001-10-17

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