しばさきのキムチとバット~日韓野球考・第24回「がんばれベアーズ2009」

5月15日(金)斗山ベアーズ対三星ライオンズ@蚕室野球場

2008年は、転職と長男の誕生もあり、渡韓する機会もなく、斗山ベアーズの試合を見ることも出来なかったが、3月に結婚した友人に結婚祝いを贈るという用事もあり、約2年ぶりにソウルに行くことになった。4月から10月までの間にソウルに行くということは、イコール、野球を見ることができるということを意味する。試合のない月曜日以外の天気が悪くない日に限定されるが、今回の滞在は5月15日(金)から17日(日)の3日間。日曜日は2時のフライトだから、野球が見られるのは2日間である。週間天気予報でも、直前の天気予報でも、15日は曇りのち雨で、16日は雨。ヤキモキしながら関空を飛び立った。
 インチョン空港に着いて・・・
携帯電話をレンタルし、KALリムジンバスで市内に向かう。午後1時前だが、すでに雲は厚く、時々、車窓に水滴がつく。試合開始は6時半。雨が強くならないことを祈りながら、乙支路にあるロッテホテルでKALリムジンバスからタクシーに乗り換えた。そのタクシーだが、いつも乗っている銀色の一般タクシーでもなく、黒に金帯模様の模範タクシーでもないオレンジの車体。窓には『International Taxi(一般タクシーと同一料金) 
』というステッカーが貼ってある。車内は清潔で、運転手さんは感じの良いおっちゃんであった。『今晩、蚕室野球場に行く予定なんですけど、今日の天気はどうなりますかね?』と尋ねてみると『雨が降ってくるけど、まだそんなに強く降らないから試合はやるんじゃないかな。明日はもっと天気が悪いみたいだけどね。ところで、野球を見に行くって、記者さんですか?』との返事。記者ではない旨の返事をし、運転手さんの『記者って単語もそうだけど、中国語と韓国語と日本語の単語は似ている発音が多い』という講釈を聞きながら、東大門にある目的地のホテル『ウエスタンコープレジデンス』に到着した。

 荷物を解いて、出発。
蚕室野球場に行く前に少し寄り道をし(寄り道先については『韓国プロ野球グッズショッピング情報』にて後述する)、総合運動場駅に着いたのは4時半頃であった。いつものように、斗山ベアーズの広報担当のチョ・ソンイル次長に電話をし、関係者も出入りする中央口からテーブル付き特等席に入れてもらう。広報の仕事は試合前から試合後まで、非常にお忙しいのだが、いつものように歓迎してもらった。最近、チョ次長の息子さんが野球を始めたという話を聞いたり、私の息子の写真を見てもらったりして、しばらく過ごした後、チョ次長は持ち場である記者席に戻って行かれた。
 試合開始までの約1時間・・・
ベアーズクラブの来場ポイントを付けたり、グッズショップを見たり、バーガーキングのワッパーセットを食べて過ごすことにした。一塁側の入場口に行くと、グッズショップの種類が増えていた。レプリカユニフォームや帽子、Tシャツ、キーホルダーなど一般のグッズを扱うコーナー(Nepos)、主にプロ仕様の帽子やユニフォームなどの高価なグッズを扱うコーナー(We Fan)、高級ぬいぐるみを扱うコーナー(Build a Bear)、携帯電話用品を扱うコーナー(Sports n star)、ネックレスなどのアクセサリーを扱うコーナー(Beewado)、赤外線マウスなどのコンピューター周辺機器を扱うコーナー(E case)が売り場を構えていた。1997年に初めて来たときには、細々とサインボールと帽子を売るコーナーがあっただけだったが、随分とにぎやかになった。
蚕室野球場内の売店

蚕室野球場内の売店

高級ぬいぐるみの売店。値段は7万7千ウォン~

高級ぬいぐるみの売店。値段は7万7千ウォン~

 まずは、プロ仕様グッズのショップへ・・・
ここで選手用冬季用ジャンパー(17万ウォン)と卓上カレンダー(5千ウォン)、雨傘(1万5千ウォン)、ステッカー(1万ウォン)、スポーツタオル(1万ウォン)を購入。荷物が増えるが、翌日の試合が中止になれば買うことが出来ないので、思い切って買うことにした。私もかなり爆発した買い方をしていたが、韓国人ファンも数多く訪れていた。カップルでプロ仕様ユニフォーム(7万ウォン)を買うファンもちらほら見かけた(私はアベックという単語を使う方がしっくりくるのだが、嫁さんに『アベックは昭和な言い方で古い。カップルと呼んだげて』と言われた)。このショップの価格設定は少し高めなのだが、高級なグッズを求めるマニアも増えたのだろう。試合中もユニフォームを試着しているファンが多かった。
FILA社製 選手仕様のジャンパー

FILA社製 選手仕様のジャンパー

ベアーズグッズ(タオル、手提げバッグ、マフラー)

ベアーズグッズ(タオル、手提げバッグ、マフラー)

カレンダーと交通カード

カレンダーと交通カード

 それから携帯電話用品のコーナーにも行ってみた。
『携帯ストラップ型交通カード販売中』との張り紙があり、学生のバイトと思われる兄ちゃんに『Tマネーとどこが違うんですか?』と聞いてみた。『機能は同じです。同じように使えますよ。種類もいっぱいありますから見ていってください』とのことだったので、キム・ヒョンス選手(2008年首位打者)のものを購入した(8千ウォン)。
 一般グッズの売り場へ。
そして、忘れてはいけない我が息子へのお土産を購入すべく、一般グッズの売り場へ。『ウチの息子が10ヶ月なんですが、小さいサイズの商品がありますか?』とアルバイトと思われる若い女性店員に聞いてみた。『すいません。ユニフォームもTシャツも5歳サイズからしか作ってないんです。10ヶ月だと・・・まだ、かなり大きいですね』とのこと。『そうですか。5歳になったら連れてくることにしますよ』と言って、我が息子へのお土産は東大門の斗山タワーかソウル駅のロッテマートで探すことにした。それから、ベアーズクラブの来場ポイントを付けに行って、バーガーキングでハンバーガーを買って、座席に戻った。試合開始まであと30分。
New ERA社の斗山ベアーズ帽子とバーガーキングのワッパーセット

New ERA社の斗山ベアーズ帽子とバーガーキングのワッパーセット

弱い雨がぽつぽつと降り始めた。購入したばかりのベアーズ傘を広げて、ハンバーガーを食べながら試合開始を待った。本当は16日(土)に会う予定だった前職の同僚2名が急遽、球場まで会いに来てくれることになったのだが、退勤後に来るので、7時頃までは一人である。嫁さんと息子が居ないのが寂しいが、この日は天候が良くないにも関わらず客足は良く、ネット裏の特等席もかなり埋まってきた。この日は『中央大学の日』というイベントで、中央大学の学生や教員、関係者、約6,100名がベアーズの応援に訪れ、パク・ヤンウ総長と、在学生でもあり人気アイドルグループ少女時代のメンバーでもあるスヨンさんによる始球・始打式が行われることになっており、試合開始前にも関わらず、白い応援風船棒を叩く音が鳴り響いていた。
 いよいよプレイボール!
愛国歌斉唱があり、始球・始打式が終わり、定刻より3分遅れの6時33分、いよいよプレイボールである。ベアーズの先発投手は、去年まで主に中継ぎだったキム・サンヒョン投手、ライオンズはエースのペ・ヨンス投手である。
 1回表・・・
先頭打者を三振に取ったキム・サンヒョン投手だったが、2番のパク・ハンイ選手にレフトへ3塁打を浴びる。ライナー性の当たりだったのだが、照明塔の明かりとボールが重なったのか、レフトのキム・ヒョンス選手が後逸するというアンラッキーな3塁打。蚕室野球場のナイターでは、このようなヒットが時々ある。雨の日はエラーも出やすいので、試合が長引かなければ良いのだが・・・。結局、初回に1点を失うことにはなったが、最小限で食い止めたという感じである。
1回の表が終わったところで、友人2名が球場に到着したと電話が来たので、入場口まで迎えに行った。初回のベアーズの攻撃を見逃すことにはなるが、小雨が降る金曜日の晩に会いに来てくれたのが嬉しかった。野球の話やお互いの近況を話しながら、試合は進んでいく。細かい雨がしとしとと降り続く。

2回表にも1点を失ったベアーズだが、2回裏に早速、反撃開始である。ヒットとエラーで得た無死1、3塁のチャンスに7番ショートのソン・シホン選手(今シーズン、軍隊から復帰)が三振したが、スタートしていた1塁ランナーが2塁ベース手前でストップし、挟まれている間に3塁ランナーがホームインして1点。1-2となる。2アウト2塁で、続く8番キャッチャーのチェ・スンファン捕手が放った打球はライトへのライナー性の当たり。今度はライオンズのライト、カン・ボンギュ選手が打球を見失い、ヒットにしてしまう。これで2-2の同点となる。2回を終わったところだが、バタバタした試合展開である。

その後、4回裏に1アウト2、3塁のチャンスを掴んだベアーズは、9番セカンドのキム・ジェホ選手がライト線へ2塁打を放ち2点を勝ち越し、7回にも1点を追加して、5-2となる。
 8回表、ライオンズの攻撃!
友人がトイレとタバコ、ついでに、温かい飲み物を買うために席を立った8回表、ライオンズの攻撃。韓国プロ野球史上、最多安打と最多ホームランの記録を持つヤン・ジュニョク選手が打席に入った。初球はバントの構え。40歳の大ベテランが何でもいいから塁に出ようという姿勢を見せる。次の低めの速球を掬い上げた打球がライトの応援ステージに向かって伸びて行った。打球はフェンスを越えたのか、越えていなかったのか、肉眼では越えたようにも見えたが、一旦下された2塁審判の判定はフェンスを越えていないという判定。ヤン・ジュニョク選手は巨体を揺らして3塁まで全力疾走。ライオンズのソン・ドンヨル監督の抗議を受けて、判定はビデオ判定となり、審判団がビデオルームに引き上げた。結局、ビデオ判定の結果はホームラン。5-3とベアーズは追い上げられたが、今季から導入されたホームランのビデオ判定の場面を見られて、少しラッキーであった。
ビデオ判定に行く審判団

ビデオ判定に行く審判団

めでたくホームランが認められたヤン・ジュニョク選手

めでたくホームランが認められたヤン・ジュニョク選手

 9回表。
ベアーズは今季から抑えを務める3年目イ・ヨンチャン投手がマウンドに上がる。高卒3年目で、年俸は2,400万ウォンである。ここ近年、次々と若手が育つベアーズだが、年俸の低い若手選手が一軍のクローザーを務めているのは凄いことだと思う。もっとも、韓国プロ野球は日本や米国メジャーリーグに比べて年俸は低い。先のWBCでは、韓国対ベネズエラ戦で、韓国の先発ユン・ソクミン投手(キア・タイガース)とベネズエラの先発シルバ投手(シアトル・マリナーズ)の年俸を比較したら90倍だったとか、日本代表と韓国代表の年俸総額を比較したら18倍だったというニュースを韓国メディアが伝えていた。一緒に見ていた日本野球にも詳しい友人は、『今、フィールドに居る9人の斗山の選手の年俸総額は、読売ジャイアンツの主力選手一人の年俸より安いと思うよ。もちろん、サードを守る年俸9億ウォンのキム・ドンジュ選手を含めての話だよ』と話していたが、それくらいベアーズの若手への世代交代が着実に進んでいる証拠でもある。イ・ヨンチャン投手は、ヒットを2本許したが、併殺などを絡めて無事に無失点で試合を締めた。

試合終了後。
雨が降り続く中、ヒーローインタビューが行われ、広報担当のチョ・ソンイル次長もトランシーバーを腰に付けて、ベアーズのベンチ前で報道陣と選手の橋渡しに忙しそうにされていた。ファンサービス部門のチーム長である、キム・ヂョンギュンさんに『明日は中止にならなければ来ますが、天気が悪い場合は、球場まで来ないかと思います。日曜日は午後2時の飛行機で日本に帰りますので、チョ・ソンイル次長にもよろしくお伝えください』と挨拶をして球場を出た。

結局、16日(土)は朝から晩まで全国的に雨が降り、プロ野球も全試合が中止となった。中止になった土曜日は、雨の中、息子へのお土産と、嫁さんから頼まれた『B・Bクリーム』を買いに行った。斗山ベアーズのロゴがプリントされた傘を差しながら。

<2009年 韓国プロ野球で新しくなったこと>

 

1>各チームの試合数が126試合から133試合へ増加

2>無制限延長戦の廃止
- 延長戦は12回で打ち切り。
- 金、土の試合が雨天中止の場合は、翌日がダブルヘッダーとなる。
- 勝率計算は、勝利数÷試合数(引き分けは負けと同じ扱い)

3>ベアーズのファンサービス
2008年と大きく変わらないが(昨年の記事を参照)、クイーンズデーという女性ファンをターゲットにしたイベントが実施される。内容はピンクを使ったユニフォームの着用や入場料の割引などがある。詳細は斗山ベアーズのホームページでご確認を(www.doosanbears.com)。

韓国プロ野球グッズショッピング情報

その1)Sporting21
ここ数年、日本でもメジャーリーグの人気が高くなり、帽子やTシャツが売られる店も増えた。その中でも、選手がフィールドで被る帽子と同じ帽子を作っている米国New ERA社の帽子は人気商品である。日本のチームでも千葉ロッテマリーンズ、東京ヤクルトスワローズ、横浜ベイスターズなどの4球団は試合でNew ERA社の帽子を被ってプレーをしているが、韓国でも三星ライオンズ、ロッテ・ジャイアンツ、韓火イーグルスは、試合で同社の帽子を被っている。そのNew ERA社と韓国野球委員会(KBO)の間でライセンス契約を結び、韓国プロ野球各球団の帽子を販売している会社がある。Sporting21という会社で、地下鉄2号線のポンチョン(奉天)駅近くにあり、ロッカールームというインターネットサイト上で、韓国プロ野球、メジャーリーグの帽子を始め、WBC韓国代表チームのグッズも販売している(http://www.lockerroom.co.kr/)。インターネットショッピングが中心だが、直接訪問しての購入も可能とあったので、蚕室野球場に行く前に訪問した。球場以外のソウル市内で韓国野球グッズを手に入れられる場所は非常に珍しいので、日本にいる韓国野球マニアの皆様に紹介させて頂こうと思う。営業は平日のみ、場所も繁華街ではないのだが、広報を担当するハン・ミジョンさんは日本語も上手なので、行く前に電話をして行くと良いだろう。優しいスタッフが歓迎してくれるはずだ。もちろんクレジットカードも使えるのでご安心を。
Sporting21のスタッフと各球団の帽子

Sporting21のスタッフと各球団の帽子

Sporting21のスタッフとWBC韓国チームのTシャツ

Sporting21のスタッフとWBC韓国チームのTシャツ

Sporting21で入手したWBC韓国代表チームの背番号入りTシャツ(マジェスティック社製。4万9千ウォン)と帽子(New ERA社製3万6千ウォン)

Sporting21で入手したWBC韓国代表チームの背番号入りTシャツ(マジェスティック社製。4万9千ウォン)と帽子(New ERA社製3万6千ウォン)

Sporting21で入手したNew ERA社の帽子(左から斗山ベアーズ2008年韓国シリーズ、2007年オールスターゲーム記念、ロッテ・ジャイアンツの帽子。2万6千ウォン~3万6千ウォン)

Sporting21で入手したNew ERA社の帽子(左から斗山ベアーズ2008年韓国シリーズ、2007年オールスターゲーム記念、ロッテ・ジャイアンツの帽子。2万6千ウォン~3万6千ウォン)

 <行き方>※移転しました。<2010.2.11>
地下鉄3号線シンサ(新沙)駅7番出口から出て、一つ目の角を左に曲がります。まっすぐ進むと右側にあるビルの4階(1階はビアレストラン)。
営業時間>
月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで。土日、祝日は休み。

 その2)ロッテマート
2009年シーズンからキア・タイガースとロッテ・ジャイアンツ、斗山ベアーズの3球団が共同で子供ファンクラブの入会手続きが全国のロッテマートで行えるようになった。そんなこともあってか、ソウル駅にあるロッテマートの2階にあるスポーツ用品売り場には、帽子やユニフォームが売られている。悪天候や用事のために、球場には行けなかったが、野球グッズは購入したいという場合には便利である。日本人観光客も海苔やお菓子、お茶などを買いに来る名所にもなっているので、家族揃ってショッピングをしても楽しいし、韓国の庶民がどんな生活用品を使って、どんなものを食べているのかを伺い知ることができるのも面白い。

その他情報

※お店「Sporting21」は移転しました。<2010.2.11>

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-06-02

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