ソウルにある古い集合住宅巡り!

建築萌え!今回はソウル市内に残る古い集合住宅をご紹介。古い建物を見て回る楽しみをみなさまにお届けー!街歩きがもっと楽しくなりそう?

こんにちは、ソウルナビの建築探偵、るみです。ソウル市内は現在あちこちで大々的な開発が行われ、建設ラッシュに湧いています。次々と高層マンション(一般的に韓国ではマンションをアパートと呼びます)ができる中、今回注目したいのが1960年後半から70年代に建てられた集合住宅。老朽化してはいますが、当時の斬新でかっこいいデザインや、そこに住む人たちの生活や時間が溶け込んだ建物は、なぜだか見る人を引きつけます。韓国でもそういった古い集合住宅が映画やテレビのロケ地としてよく使われています。また、カメラ好きの人がお気に入りの一枚を撮るために建物めぐりをするんだそう。さっそくるみも個性的な古い集合住宅を探してきました!

韓国で最古のアパート、忠正(チュンジョン)アパート

まずは韓国の集合住宅の歴史をちょこっと。1930年、南大門市場からほど近い会賢洞(フェヒョンドン)に建てられた三國アパートが韓国で最初のアパートと言われています。日本の同潤会アパートの平面図をそのまま導入して作られたそうで、日本人が経営する三國商会という練炭販売会社が多田工務店に設計と施工を頼み、南山(ナムサン)へと向かう傾斜地に作られました。3階建てでスチーム暖房を設置、水道・電気も整備され、屋上には洗濯場があったそうです。また、1935年に内資洞(ネジャドン)、厚岩洞(フアムドン)にも同様のアパートが建てられ、特に内資洞のアパートは終戦後ホテルとして、米軍の宿舎として使われたそうです。
現存する最古の集合住宅として有名なのが忠正(チュンジョン)アパートです。1930年、日本人の豊田種雄によって現在の忠正路3街250-6番地に建てられました。こちらは地下鉄2・5号線チュンジョンノ(忠正路)駅の9番出口を出るとすぐそこにあります。今は真緑に塗られ、ぱっと見コンクリートのなんの変哲もない雑居ビルのようですが、当初4階建てで、15坪から35坪タイプの部屋が52あったそうです。
豊田アパートと呼ばれた建物はその後ホテルとして使われたり、飲食店の集まる雑居ビルになったりといろいろな用途で使われ、朝鮮戦争後に5階を増築、1979年に都市計画により建物の半分が壊されたそうです。「忠正アパート」と書かれた看板のある入り口を抜けると・・・
まずびっくりするのが建物の真ん中にずどーんとそびえる給水塔。その塔をまるで三棟の建物がぐるりと囲んだかのような構造になっています。一番下まで日光が届くようなつくりですね、たくさんの観葉植物がおいてあります。現在は増築された5階が管轄区役所からクレームがついているようで、詳細はわかりかねますが住民たちともめているようです。
中庭にそびえたつ給水塔

中庭にそびえたつ給水塔

光が十分差し込んできます

光が十分差し込んできます

上から見下ろしました

上から見下ろしました

小さなドアの向こうには何が・・

小さなドアの向こうには何が・・

不思議なつくりです

不思議なつくりです

生活感にあふれています

生活感にあふれています

坂道を利用して作った段々アパート、聖ヨセフアパート

聖ヨセフアパートは、地下鉄2・5号線チュンジョンノ(忠正路)駅4番出口から歩いてすぐ。または5番出口を出て、イ・ビョンホン主演ドラマ『IRIS』のロケ地としても有名な薬峴聖堂(ヤッキョンソンダン)側から行ってもよいでしょう。坂道の傾斜に沿ってながーく続くアパートというのは、なかなか見る機会がないと思います。1階から5階まであるのですが坂に沿って段々と続いているので、階段をのぼるうちわけがわからなくなってきます(笑)。1970年に竣工。その名前からすぐ近くの薬峴聖堂と関連があるようですが、当初は教会の所有だったそうです。教会の資金不足により民間に所有権が渡り、その後は名前だけが残ったそう。現在アパートの隣で大規模な再開発がはじまっていて、工事関係者が坂道を行ったり来たりしています。住民たちは40年以上たった古アパートが再開発の対象になることをとっても期待しているとのこと。構造的に価値があるので保存を、と考えるのは一部の建築家と建築愛好家くらいなのでしょうか・・・
聖ヨセフアパートという看板が

聖ヨセフアパートという看板が

内部

内部

坂下から見た図

坂下から見た図

近代的な警察庁の裏にたたずむ古アパート、西小門アパート

地下鉄2・5号線チュンジョンノ(忠正路)駅5番出口を出て西小門路をまっすぐ行き、鉄道踏切の手前で左折をすると、これまたながーいアパートがどーんと建っています。1972年に完成、9階建てで127世帯が入っているそう。アパートというよりはその色具合からして“団地”と呼びたい西小門アパート。ぐいっとまがった道路に沿って、アパート自身もそのカーブに合わせて曲がっています。すぐ後ろには近代的なビルの警察庁が見え、その都市風景らしい風景をカメラで撮りたいと思うのはるみだけではないはず!ちなみにこちらは、チョン・ドヨン、ハ・ジョンウ主演の映画「素敵な一日」にも登場しているそうですよ!
窓がアクセントになってますよね

窓がアクセントになってますよね

警察庁の建物が

警察庁の建物が

坂の上の師範アパート、会賢第2市民アパート

地下鉄4号線フェヒョン(会賢)駅の4番出口を出て、南山公園に向かう途中にあります。けっこうきつめの坂をえっこらえっこら歩いていたところ、後ろにいたおじさんが携帯電話で話していました。「え?示範アパート?示範アパートの、お?505号室?わかった。」と。そして電話を切ったとたん、るみに示範アパートがどこにあるかを聞いてきたのでした(笑)。るみがわからないというと、近くにいたおばさんが道を教えてくれました!さて、前置きが長くなりましたが1970年に作られたこちらのアパートは独特なたたずまいが人気で、映画やテレビのロケ地として有名です。チェ・ミンシク主演の「拳が泣く(クライング・フィスト)」 、イ・ヨンエ主演の「親切なクムジャさん」、ハ・ジョンウ主演の「追撃者」などなど。韓国のあるお笑い番組でも取り上げられて訪問者が一気に増えて住民が困ったのか、あちこちに“撮影禁止”“プライバシー侵害の場合は法的手段”といった警告看板があります。なのでぐっと近づいての撮影は控えました。
ところで示範アパートって何?ここでちょっと説明させてくださいね!1969年からソウル市が貧困層の不良住宅の解決を目的として、市民アパートの建設を推進しました。しかし突貫工事だったため建物の安全性に問題があり、1970年にソウル市マポ(麻浦)区にあった「ワウアパート」が崩壊、33名死亡、44名負傷という大事故が起きてしまいました。事件後は安全性を重視した住宅作りが進められ、絶対に崩れないお手本集合住宅という意味合いを込め、市民アパートは「示範アパート」と呼ばれるようになりました。会賢(フェヒョン)第2示範アパートもその一つというわけです。

アパートはコの字になっていて、山の急な斜面に沿って建てられているため道路側棟への入り口が6階になり、平行して建っている棟側にも橋がかかっていて7階から入るようになっています。(説明下手ですみませんが、写真をよーくごらんになってみてください)建物の老朽化が進んでいるのでソウル市としては解体したいのですが、補償内容に不満を持つ住民たちは委員会を組織して反対しているそうです。がんばってほしい~
撮影禁止!

撮影禁止!

入り口は建物の6階になります

入り口は建物の6階になります

廃公園、近づかないようにとあります

廃公園、近づかないようにとあります

奨忠壇(チャンチュンダン)ギルの集合住宅

地下鉄3号線トングッテイック(東国大入口)駅3番出口から、東大門方面へ向かう通りの途中に位置しています。ちなみに近所にはキム・ジュンオプ設計の旧蘇産婦人科医院や、キム・スグンの京東教会など韓国近代建築家の作品があり、建築好きにはたまらない(!?)エリアになっています。

ところで、奨忠通り(チャンチュンギル)の集合住宅はそのまま素通りしてしまいそうなくらいまったく目立ちません(笑)。ちなみにチャンチュンドン(奨忠洞)周辺は日本の統治時代に多くの日本人が住んでいた地域で、あちらこちらに古い日本風家屋があります。朝鮮戦争後の再建時代、1955年頃に無許可で建てられたのがこのチャンチュンギルの集合住宅。1968年に住居許可が出たそうです。

入口の扉を開けると、増築・改築で複雑な形をした建物がぎゅっと集まっています。向かい合わせの建物の真ん中で、人々はきっとおしゃべりを楽しむのでしょうが、るみが行った時は誰もいませんでした。古くから住む住民の高齢化と建物の老朽化に伴い、安価に住める住宅として現在は東南アジア方面の労働者が多く住んでいるとのことです。

かつて芸能人アパートと呼ばれたアパート、東大門アパート

地下鉄6号線トンミョアッ(東廟前)駅の7番出口からほど近いところにあります。まわりは近代的なビルが多く、その古い外観がとても目立っています。東大門アパートは1965年、住宅供給公社である大韓住宅公社が建てたもので、当時は最高級アパートとして話題になったそう。1980年代には人気コメディアンのイ・ジュイル氏らが住んでいたということで「芸能人アパート」とも呼ばれていました。
入口を抜けると中庭が広がっており、太陽の光が1階まで十分届いてとても明るいです。はたから見るとただの四角い建物なのですが、この中庭がポイントですよね、この造り、るみは個人的に大好きです。植木鉢や味噌などを保存するハンアリ(かめ)、自転車など人々の生活の品が共同スペースにたくさん置いてあります。
建物の角の丸みや、装飾的な鉄格子などがとってもモダン。細部のデザインにときめきっぱなしでしたよ!一度はソウル市のニュータウン事業により撤去の話が持ち上がっていたそうですが、市は建物の持つ歴史を考慮して保存することに決めたのだそうです。

なんてフォトジェニック!な三角マンション

いよいよ最後の紹介となりました。るみが今まで見てきた中で一番のお気に入りです。地下鉄4・6号線三角地駅の2番出口を出て、メインストリートに建物へと続く小さな通路があり、そこを抜けるとあります。A ・B・ Cの三棟があります。最初見た時は本当にびっくりしましたよ~圧倒的な“古いという存在感”に!1970年に完工したようですが、詳細はちょっとわかりません。
マンション前にこれまた謎の空き地と建物があり、何に使われているのかさっぱりわかりません。2003年に行った時はたまたま中に入れてしまい、マンションを思う存分撮影した記憶がありますが、今は入れません。このマンションのあるエリアを管轄する竜山区は、あちらこちらを再開発している熱気みなぎる区なのですが、この三角マンションも対象になっているようです。駅から徒歩1分ですしね!2011年の春に再整備案が可決したようで、おそらく近いうちに壊されると思います。こちらも住民とどう折り合いをつけるか気になるところです。
謎の建物

謎の建物

前から撮りたいのに撮れない!

前から撮りたいのに撮れない!

三角マンションって書いてあります

三角マンションって書いてあります

いかがでしたか?ソウル市内にはまだまだ古い集合住宅が現役でがんばっています。しかし再開発の対象になり、そこに住む住民との葛藤もあるのも事実。アグレッシブな反対運動をしている建物もいくつかあります。そういうところにお出かけになる際は迷惑にならないように、自己責任の範囲で撮影されてくださいね。以上、ソウルナビのるみでした。

関連タグ:建築アパートマンション散歩歴史

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2012-02-20

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