ソウルのモダン建物探検、パート3!

建築の門外漢、るみがソウルの建物をご案内、その3~「京城」の時代を求めて

こんにちは、にわか近代建築研究家(ソウル限定!?)のるみです。ソウルにまだまだたくさんの"日本"が残っているのをご存じでしょうか?昔ソウルは一時期「京城(けいじょう)」と呼ばれ、日本の統治下にありました。一部の町には日本名がつけられ、路面電車が走り、たくさんの日本人が往来していました。今ではショッピングではずせないエリア、明洞(ミョンドン)は明治町と呼ばれ、南大門市場(ナンデムンシジャン)近くにある、現在は新館建設中の新世界(シンセゲ)デパートは日本の老舗デパート、三越でした。最近役目を終えて引退(!?)した旧ソウル駅は東京駅と兄弟のようなものです。
その時代、多くの日本人が今のソウルである「京城」に移り住み、それぞれの生活を「京城」で送っていたのでした。そして今も、特に南山(ナムサン)周辺のエリアには当時の日本を思わせる建物がまだたくさん残っています。一緒に探検に行ってみましょうか。
奨忠洞(チャンチュンドン)周辺
まずはナビオフィスがある地下鉄3号線東大入口(トンデイック)駅周辺から。オフィスの窓を開けて下を見れば、もうさっそく日本式住宅が見えるくらいこのあたりにもたくさんの家が残っています。
いきなりあらわれるお屋敷。白く塗装された木製のサッシ、オンドルの煙突などから当時の建築らしいとわかります。壊されるのを待っているのでしょうか?
お屋敷のすぐ近くにあるコヤサンギルです。この通りの入口に立った時、クラクラとめまいがしました。ここは本当に韓国なの??なぜか無性に懐かしい気持ちになったんですねえ。ちなみにコヤサンギルは"高野山"の名前がそのまま残っていると考えてほぼ間違いないそうで、当時の地図を広げるとこのあたりに"高野山別院"という漢字表記があるそうです。ソウルにはこのように、そのまま土地名・通り名として残った"日本"もあるんですね。
このグリーンに塗るのが好きみたいですね、韓国の方。

忠武路(チュンムロ)周辺
このあたりは昔、繁華街があったのでとてもにぎやかだったと思われます。裏の方にこっそりとおうちがあったり、東大門(トンデムン)からソウル駅へとのびる退渓路(テゲロ)沿いに当時の建築の匂いのする商業ビルが並んでいます。
筆洞(ピルドン)にあった当時の建築のリモデリングらしい一例。丸窓とアーチ型窓、直線的にふいてある屋根の様子から当時の建築らしいとわかります。それにしてもすごい色に塗ってありますね。

龍山(ヨンサン)周辺
このあたりが一番多く当時の建築が残っていると思われます。ノスタルジックな気分になること間違いなし。そして驚く建物がたくさん。たくさんありすぎて写真を撮っていたらきりがないほど。飾り窓のバリエーションも豊かで、凝ったつくりの建物も多かったです。
優美なレリーフ、角地を生かした直線的な建物も、曲線的な建物も素敵です。
ライトグリーン一色に塗られた建物を発見。聞けば鉄道関係のお偉方の屋敷だったそうです。現在はベンチャーの事務所が2、3社入ってます。るみも中に入ることができました。とても重みのある荘厳(!)な感じまで受ける玄関、中は大正・昭和初期モダンな雰囲気と木の温かみ!ここは本当に韓国??とまたクラクラ。
クラクラはまだ続きます。こちらの木造集合住宅。こういう形のアパートは韓国では全く異色。住人がまだいるというのがさらに驚くことなんですけども。○○荘、○○館などと呼ばれていたのでしょうか。
坂を上りきって見下ろしたところ、古さの種類が他の街と何かどこか違う龍山周辺。きつくて小さな坂の多いこのエリアに、突如あらわれる整った階段の坂。神社の階段だったのでは・・・??想像が想像を呼びます。
新門路(シンムンロ)周辺
最後はソウルのど真ん中にも当時の建築がたくさんあるという例を。李舜臣(イ・スンシン)像が立っている鍾路(チョンノ)と世宗路(セジョンノ)の交わった大きな交差点を西へ進むと、"匂う"エリアがあるんですね。興国生命ビルディング近くです。
いつもバスでこのあたりを通るたびに、何か胸騒ぎがする、とでもいいましょうか、"昔の日本を懐かしむようなこの感じは何なんだろう?"と気になったのがこの新門路でした。それがるみの「京城」への興味を持つきっかけだったんです。日本でもなかなか見るのが難しい大正・昭和初期の建物、どんどん壊されていっているようです。ご興味持たれたら是非あなたの「京城」を探しにソウルに遊びに来てみて下さいね。

<ナビくんコメント>
今回の取材には私も同行しました。かつて統治者側であった日本人が、統治下の昔の建物を見てなつかしむ、というのはおそらく韓国人の心情を逆撫ですることもあるでしょう。一方、かつては日本人が住んでいただろう住居が独立後50年以上たってもまだそこに建ち、韓国の人が住み、たまに手を加えたりしながら今も大切に使われている、そのことに深い感慨を覚えます。そしてその時代の建築学的な興味も相まって、街を歩きながらついそんな建物を探してしまいます。日本人から言える立場ではないのですが、その物言わぬ小さな歴史的建物をできるだけ長く保存してほしい、と思ってしまうのです。

るみさんのレポートは今回でひとまず終わりとなります。ありがとうございました。

SPECIALl thanks to Mr.Hanju
(今回の記事作成にあたり、写真6枚と京城・建築関係の情報提供してくださいました)

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2004-06-03

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