谷みつのソウル特派員レポート・第8回「タクシーアジョッシ、ファイティング!」

※写真はイメージです。このタクシーではありません。

※写真はイメージです。このタクシーではありません。

ご存じの通り、ソウルには「一般タクシー」「模範タクシー」の2種類のタクシーがある。いずれも我々一般人が気軽に乗れる。いつもはけちけち人間なので、移動はバスか地下鉄。(このごろバスも地下鉄も100ウォンずつ値上がりしてずいぶん家計が苦しいけれど……)。
でも、 先月、親戚が来たときには、本当に何度もタクシーに乗った。やっぱり1日にいろいろな場所を回りたいのであればソウルでタクシーほど便利な乗り物はないし、まだタクシーは初乗り1300ウォンだもんね。(しかし、バスも地下鉄も料金を値上げした限りはタクシーの値上りも時間の問題か?!)。
この親戚が来たとき乗ったタクシーの運転手さんたちは個性的な人が多く、みんなとてもおもしろかった。
中央市場に行こうとして乗ったタクシー運転手のアジョッシは、
「何で中央市場に行くの?」
「イヌの肉を見に」
と言った瞬間から、
「見るだけじゃあだめだよ。食べなきゃ。食べてこそその国がわかるんだよ。」
「やっぱり食べなきゃだめですかねー?」
「あったりまえだよ。愛玩犬を食べるんじゃないんだよ。それに、こう暑いと体がだるいだろうそんなときこそ食べて元気付けなきゃ。暑いときに日本だって何とかって言うの食べるでしょう?それと一緒。いい所で食べるとほんと美味しいんだから。店紹介しようか?」
と市場に着くまでの約15分、熱くイヌ肉について語ってくれた。
『大学路(テハンノ)』に行くときにのった50半ばのタクシー・アジョッシは、私が
「テハンノまで」
と言った瞬間から
「なにー!!どこ行くって!?」
「テハンノまで」
「もう一度言ってみろ」
「テハンノ」
「発音が違う。『テハンノ』だ」 (注:こうして日本語で書くと発音が同じのようですが実際に発音は違います)
といって何度『テハンノ』の発音をさせられた事やら。
その次、どこの大学に行っているのか聞くから
「コリョデ(高麗大)」
と答えたらまた
「発音が違う!!」
とまた何度も『コリョデ』の発音を練習させられた。
私の発音の悪さはよく解っているけれど、初対面の人にここまで言われて私もずいぶん頭に血が上っているのに、アジョッシはお構いなしにどんどん話しかけてきた。
「うしろの二人は日本人か?友達か?どんな親戚だ?」
それから
「おまえは韓国に来てどのくらい経つ?どこに住んでる?独りで住んでるのか?」
などなど、いろんな質問をしてくるのだけど、話してみると人は悪くない、人の良いアジョッシで、この日は大雨で(渋滞で『イテウォン』から『テハンノ』までなんと1時間以上かかってしまった)、そのあいだ中アジョッシと話をしていた。
いろいろ世間話をするうちにおきまりの質問が
「何歳?彼氏いるの?結婚は?」
女性のみなさん、韓国でこの様な質問をされて怒ってはいけません。普通と言っては何ですが、この趣旨の質問は韓国社会においてすごく一般的な質問なのです。なので私も正直に質問に答えたのだけど、このアジョッシのすごかったところは
「○○歳?そりゃ早く結婚したほうがいいよ。それに両親も心配してるだろ。結婚するんだったら韓国の男性がいいよ。」
などなどなど…… 漢江に沈めたくなるような事を言うアジョッシだったけれど、アジョッシの年齢が私の父の年齢に近かったからだろうか、アジョッシがホント心配そうに優しそうに言ったからだろうか、なんかこの日はアジョッシの言葉を素直に聞くことができた私である。タクシーを降りるときも
「気を付けて観光しなよ」
と言ってくれ、なんか、何となく嬉しかった。
この他にも、私が日本人だということに驚いて、前を見ずに後部座席の私に振り向きながら運転をしていたアジョッシ。日本人だと喜んで、アジョッシの知っている日本語フル回転でいろいろと説明をしてくれたアジョッシ。鐘路の道路をジェットコースターさながらのスピードで通り過ぎてくれたアジョッシ。
今回そんなアジョッシたちに、タクシーに乗る度に笑わされ、、怒らされ(?)、考えさされた。
タクシーの良くない噂をときどき聞くけど、それは一部でいい人、人情味が溢れた人が多いと思う。今回、様々なタクシーに乗りそれを痛感する事ができた。 そして「一期一会」の意味も。
タクシーアジョッシ、ファイティング!!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2000-09-16

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