第26回「アパート売れました!」
明けましておめでとうございます。
去年(2004年)は韓国の不動産市場がカチカチに凍りついてしまい、新しいアパートを購入してしまったみぽりんは、お先真っ暗状態でした。なにせ今住んでいるアパートを売って1月末までに残金を払わないと高利貸し並みの利子を払わなくてはならなかったんです。「売らなくちゃならない。それも妥当なお値段で・・・」と随分と気を揉んだのですが、去年の暮に感動的に売れました。前回の記事を読まれて全国各地から激励のメールを下さった読者の皆様方、本当にありがとうございました。
去年の11月中旬
12月を目前に売値ダウンを決意したみぽりん夫妻は、近所の不動産屋さんに一斉に電話を掛けました。するとそれまでは音沙汰なかったあちこちの不動産屋さんから「お客さんを連れて行きます」という電話がぽつぽつと掛かって来たのです。やっぱりお値段に問題があったようですね。韓国のアパートは地域、場所、方角、階、ブランドなどでほぼお値段が決まっているので他の家より200万円くらい安く売りに出したら、結構反応があるんです。それでもなかなか買い手が付きませんでした。これが景気が良い時なら2、3日であっという間に売れてしまうんですが、去年は本当に景気が悪かったです。
さて韓国では日本のように既に空き家になっている家を見せるのではなく、住んでいる状態でお家を見せます。ですから家を売りに出したら掃除はもちろんのこと、整理整頓に細心の注意を払わないといけないし、洗濯物一枚干すのも気になります。何しろ見ず知らずの人が家に出入りするのですから、主婦にとってこれ以上疲れることはないでしょう。一応前日に電話でアポを取ってから来てくれますが、「20分後に伺います」なんていう気の短いお客さんもいますから外出も自由に出来ません。みぽりんは4ヶ月間ほぼ缶詰状態でした。
精神科に通う
9月から3ヵ月近くも盆唐(ブンダン)から一歩も外に出られなかったみぽりんは、そのストレスでとうとう鬱病に掛かってしまいました。こういう時は夫が精神科のお医者さんでもちっとも役に立ちませんね。それで仕方なく水原市にある小さな精神科クリニックに通うことにしました。院長先生の閔秉根(ミン・ビョングン)先生は精神分析が専門の日本通の先生で、大学病院を定年退職されてからこのクリニックを経営する傍ら、森田療法を韓国に紹介したり、日韓交流セミナーを主催したりされています。みぽりんの命の恩人です。
教会にも通う
韓国はアジアでも有数のキリスト教国なので、街には教会が至る所にあります。「アパートが一日も早く売れますように」と教会に行ってお祈りをするのは多少後ろめたかったですが、深く考えずに近所で一番有名な教会に直行し、一生懸命お祈りしました。 以前は韓国人がなぜ教会にあんなにも沢山通うのか、全く理解できませんでしたが、今はちょっと分かる気がします。求道中。
11月末
そうこうしているうちに11月末になってしまったのですが、ある日若い夫婦が来て、我が家を買いたいと言って来ました。もちろん大喜びでオーケーしたのですが、その日は手持ちのお金が足りないので契約金の一部(100万円)だけ支払い、残りは2週間後にしてくださいと言って来たのです。何はともあれお金を頂いて契約書にサインをしたので、やれやれこれで一安心と思ったんですが、何と残金をいただく日になって「突然事情が変ってしまい、約束のお金を準備できなくなってしまいました」と言って来たのです。夫と私と不動産屋はパニックに陥ってしまいました。契約破棄の場合は頂いた契約金は返さなくても良いのですが、もう一度アパートを売りに出さなくてはなりません。一体何が起こったのか?愕然としてしまいました。お客さんの立場から考えても100万円って大金ですから、諦めるにはもったいない額ですよね。目を真っ赤に腫らして「判断ミスをしてしまいました」と弁解している姿を見て胸が痛みましたが、こちらも焦っていたので大至急契約破棄の手続きを取りました。
12月14日
契約破棄の書類にサインをした次の日の朝。みぽりん夫婦は再び近所の不動産屋へと走りました。入居期限の1月31日はもう目前。一刻の余裕もありません。そしてお昼の12時。「お客さんを連れて行きます」とまずA不動産から第一報が入りました。そして12時30分。「100万円安くしてくれたら買うといってますが如何されますか?」という電話が。すったもんだの末、マイナス50万円で手を打ちましょうということになり、印鑑と保険証を持って玄関まで行ったところ、B不動産がお客を連れてきたのです。その上、B不動産が連れてきたお客さんが「私もこの家気に入りました。」と発言。A不動産とB不動産が我が家のリビングルームで大喧嘩を始めたのです。「10万円でも多く払った方に売るのは当然だ」というB不動産の強気の発言で、いったん各々のオフィスに帰っていただいて、携帯で夫と値段交渉をして貰うことになりました。
そうしてドウナッタカトイウト、午後3時にB不動産が連れてきたお客さんがプラス50万円で落札していったのです。「B不動産のお客さんと契約してくれ~」という夫の連絡を受け、印鑑を片手に玄関から飛び出した私の後ろから、「奥さん!売れたんですか~」と叫びながらA不動産が追いかけて来ました。その上、この日は1日中電話が鳴りっぱなしで、いままで不動産屋からほぼ無視状態だった私は余りの変り様に唖然としてしまいました。
このように4ヶ月間も大変な心労を重ねたのですが、最終的には数時間で決着が付いてしまいました。韓国人の卓越した決断力と交渉力の素晴らしさには舌を巻いてしまいました。この不景気に朝売りに出して、夕方には売れてしまうというのは滅多にないことなので、方々から「どちらの不動産屋さんが仲介して下ったのですが?」と聞かれたんですが、そのたびに「神様が売ってくれました」と答えることにしています。これこそ正に神業。今でもボーーっとしています。皆様、波乱万丈の人生を送りたいのなら、韓国にお越しくださいませ。
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記事登録日:2005-01-17