オセロの留学特派員レポート・第14回「日本に帰る前にテコンドーの段を取りたい!」

第14回「日本に帰る前にテコンドーの段を取りたい!」

第1回レポート紹介した西江大学のテコンドートンアリ、覚えているでしょうか?3月に交換留学生としてソウルに来てから10ヶ月間、言葉と文化の壁にぶつかりながらなんとか通ってきたテコンドートンアリでしたが、とうとう帰国とともに卒業しなければならなくなりました。ここまでやってきた事を何か形に残したい、そう思っていたときにサボンニムの口から出たのが『日本に帰る前に一段を取って行け!!』 ちょうど秋頃から増えた新入生達も、来年新入生にテコンドーを教えられるように一段を取る準備を始めていました。また、二段の受験希望者も3人登場。トンアリでもテコンドーの型(プンセ)を9月頃から学び始めていたので、12月の昇段試験(スンダンシホム)には間に合うのでは・・・と思い、私も一段受験を決心したのです。更に11月からはトンアリだけでなく週2回道場にも通い、道場の館長(クァンジャンニム)から本格的に学びました。 そうやって準備してきてとうとうやってきた12月18日土曜日、昇段試験当日。 さてさて、私たち西江大学テコンドー部は皆無事に一・二段を取れたのでしょうか?今回はこのテコンドーの昇段試験について報告したいと思いま~す!!

☆テコンドー昇段試験とは?

韓国ではテコンドーの昇段試験は2ヶ月ごと、偶数月にあります。級は道場やトンアリごとに審査、一段から五段までは地区ごとに審査し、それ以上になると国立競技場で審査します。受験料は、私達は道場を通じて申し込んだので一・二段とも5万ウォンでしたが、個人で申し込むと10万ウォンもしくはそれ以上するらしいです。審査の方法は、10人ほどの審査員の前で、一段受験者なら指定されたプンセ1つ+テグ8章、二段受験者なら指定されたプンセ+コリョのプンセをし、その後に組み(キョルギ)の審査をします。四段以上の受験なら筆記もあります。

●いよいよ審査場へ!!

この日は日常コリアンタイムの部員達も時間通りに集まり、私が最後に到着しました・・・。いくらコリアンタイムと言っても、重要な日には時間厳守なのですね。文化を誤解していた自分を大反省。 地下鉄新村駅から15分ほどで到着した永登浦区庁(ヨンドンポクチョン)で降り、審査場へ向かいました。

●練習

到着してすぐに道着(ドボク)に着替えて、テグ(プンセの基礎)の1章から8章までの練習。緊張のせいか、それまで出来ていたのに左右の順序を間違えたり、途中で違う章をしてしまったり・・・私だけでなく、周りの皆もそうなっていき、だんだん『アンデ、アンデ(ダメだ)』というセリフが多くなってきました。師範の先生(サボンニム)がラーメンをご馳走してくれるといいましたが、私は友達2人と練習を継続・・・もしかして練習のし過ぎが悪かったのかな??練習の途中で公務員試験のため休学している先輩2人が応援に来て、『パカス』という日本のオロナミンCのようなドリンクを持ってきてくれました。その先輩達に最終確認をしてもらったのですが、やはりここは韓国。根拠のない『ケンチャナ、ケンチャナ(大丈夫)』という言葉を最後にかけられ、不安なまま会場に向かいました。

●まずは子供達の演劇示範

開会式で、私たちの通っていた道場の生徒達が演劇示範を披露しました。みな小学生くらいで普段はとってもかわいいのですが、演劇示範になると真剣で、私たちが学祭でしたモノ以上の出来でした・・・。小学生からテコンドーがこんなに出来るなら私の歳になったらどうなってるんだろう?この中からプロが出てもおかしくないくらい上手なんだけど。

●本番

四,五段の審査が行われている間、番号札を胸につけ、番号を呼ばれたら返事をして審査員の前に行き、自分の名前を申告しました。西江大からは一段受験者は6人で、全体では23人いました。中には50歳近くのおばちゃん達や、西洋系の外国人も。私たち日本人も不思議そうに見られていたのかな? そういえば最近、韓国ではWell−Beingという風潮のためか、おばちゃん(アジュンマ)にテコンドーが人気らしいです。アジュンマ向けの時間帯を設定している道場も多くなってきたとか。道場も企業と同じなのですね。

四,五段の審査が終わって、いよいよ一段の審査がスタート。審査台に上がるとき、久しぶりに足が震えるという感覚を体験しました。 そして審査は次の順序で進んでいきました。
基本チギ(手の技)、基本姿勢、基本チャギ(蹴り技)
プンセ:テグ(1~7章の中から1つ)、 
プンセ:テグ8章
キョルギ(組み)
私たちはプンセでテグ2章を指定されました。これはその時に指定されるので、外国人にとっては一苦労。韓国語の1と2、3と4の発音は聞き取りにくく、聞き間違ってしまうと全く違うプンセになってしまうので注意していました。そして私の見る限り、西江大学の学生達は他の受験者よりもかなり上出来でした。いやいや、これはひいきではなく(笑)道場まで通って練習したからでしょうか、動作一つ一つが力強く、型をただ覚えただけという人たちとはちょっと違いました。そして私はというと、あまりの緊張に顔が強張っていたそう・・・その時の私の顔は今でも笑いのネタです。

●終了後・・・

大学の試験が17日に終わったこともあり、昇段試験の後はチョンガンパーティ(終講パーティ)がありました。
その3日後の月曜日、二段を受験したオッパーから電話が。
『祥子、失望せずに聞いてくれ。祥子のプンセはすごく良かったみたいなんだけど、キョルギの時の気合や掛け声がおかしくてかなりマイナスされてね、落ちちゃったんだ。』
これのセリフを聞いた時、ショックにはショックだったのですが、「掛け声がいかにも日本人っぽくてダメだったのかな」とか「ここで諦めるのはもったいないし、2月にまた韓国に来て審査を受けよう」とまで考えていました。ちょっとため息をついてから
『オッパー、分かったけど、さすがに悲しいよ』
と話したところ、オッパが笑いながら
『ノンダミヤ(冗談だよ)』
・・・え、冗談??こんな冗談、笑えもしないと思い、思わず電話を切ってしまったオセロでした・・・。というわけで他の受験者達も今考えてみればおかしな理由で審査に落ちたと言う連絡をオッパから受け、まんまと騙されショックを受けたわけですが、皆無事合格しました!!

段を取るためにテコンドーを始めたわけではなかったけれど、自分が今までやってきた結果をこのように形に残せて本当に嬉しい!!それにしても、テコンドーを始めた頃を考えると、私が一段だなんて想像も出来ないことです・・・。先輩に頂いた名前入りの黒帯を見て、これで終わりにしたくない、日本でも続けたいという気持ちが強くなりました。そして出来れば来年また韓国で二段を取りたい・・・欲張りなオセロはそう思うのでした。 テコンドーでなくとも何か組織に入れば、韓国での人間関係の重要さ、情の厚さ、年齢の重要さ、後輩を思いやる文化・・・等、韓国の文化や習慣をたくさん感じる事が出来ると思います。私はうまく段取得にまで漕ぎ着けましたが、そうでなくとも学んだ分だけ得るものがあります。テコンドーを学んでみるのも良いと思います。せっかくの留学です、勇気を出して何かに飛び込んでみて下さいね。ファイティン!!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2005-01-05

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