KTXでソウルから約1時間、釜山から1時間半!大学と研究所が多く集まる科学技術都市大田、その旧市街に残るレトロを求めて1泊2日で行ってきました!
こんにちは、ソウルナビです!大田(テジョン)と聞くと皆さんは何をイメージされるでしょうか。科学研究都市、1993年のエキスポ、儒城温泉が近い、ちょっと昔だと大田ブルース?でも今回、ナビがご紹介するのは大田広域市の東部、大田駅を中心とした旧市街と呼ばれるエリア。このあたりは日本統治時代から1970年代の建物が結構多く残っています。ここ数年、大田でも古い街並みを保存・活用していく動きが活発になり、近代建築の有効活用が模索され、古い家屋を改造したおしゃれなカフェやレストラン、ショップ、ギャラリーなどが次々とオープン。市の西側の新市街地とは対照的に、アート活動や文化発信の場として地元の若い人たちが集まるようになり、ちょっとしたソウルの弘大(ホンデ)のような雰囲気になっているとか?!
それでは、さっそく大田にいってきます~
大田一日目 旧市街に吹く新しい風!
大田は韓国の中央部にあり、釜山方面の京釜線と光州方面の湖南線が分岐する鉄道の要所。ソウルからのアクセスも大変便利で、KTXに乗れば1時間弱であっというまに到着です。釜山からも大田まで約1時間半。とても早くてびっくりです。
それでは大田駅前から出発!
駅の周辺はにぎやか!
国鉄大田駅をおりるとすぐにあるのが中央市場。とても活気があります。少し進むと大田市名物、木尺橋(モクチョッキョ)が。
■旧産業銀行大田支店
重厚さと柔らかさを持ったベージュの建物が見えてきました。大田市内に残る近代建築を代表するルネサンス様式の建物。1937年に朝鮮殖産銀行大田支店として建てられ、1945年から1997年まで韓国産業銀行大田支店として使用されていました。今は眼鏡屋さんが入っています。不思議な組み合わせですよねえ。中はだいぶ改築されて昔の面影は残っていないのがちょっと惜しいです。
■聖心堂本店(ソンシムダンボンジョン)
聖心堂は、1956年創業の老舗パン屋さん。フランスのグルメガイド「ミシュランガイド」に掲載されたパン屋として有名です。ロッテデパート明洞本店でのイベントで、長蛇の列になったという名物パンをゲットするべくお店に、ナビも飛び込んでみました!
その名物パンとは揚げソボロパンとにらパン。ソボロパンは韓国で一番人気の菓子パンで、日本のメロンパンにクッキー生地をソボロ状にしたのをかけて焼いたもの。聖心堂のソボロパンは、中につぶあんを入れそれをさらに揚げてしまうというダイエッター泣かせのハイカロリーなパン。この日は運がよくて並ぶことなくスムーズにゲットしました。ソボロ部分がさくっとしていて、パン生地はもっちり、つぶあんとよく合ってとってもおいしい!洗練さからはほど遠いけれど、一度食べたらはまりそう!
そしてにらパン。ニラがパンの中にぎっちり入っているのを想像し、いやーあわないでしょ!と思っていたのですが・・・一口食べたらこれがうまい!1986年に生まれたにらパンはニラ、卵、ハムをさっと炒めたあんをパンに詰めたもので、材料のバランスも塩気もちょうど良く、ナビもすっかりファンになってしまいました。
お店には60種類以上のパンがあり、往年の名曲大田ブルースにあやかったブルース餅やブルース薬菓(ヤックァ)などはお土産として人気とか。2階のレストランフロアで買ったパンやパッピンス(氷あずき)も食べられますよ。
手ごろな価格のパンがたくさん
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その名も大田ブルースもち!
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■珊瑚旅人宿(サンホヨインスク)今回ナビが泊まった「珊瑚旅人宿」はとってもユニークなゲストハウス。もともと1970年代に建てられた簡易旅館で、2000年以降ほぼ廃墟に近い形で?営業していたのですが、パブリックアートに関心のある現在のオーナーが2011年、若い人たちのアジト兼ゲストハウスにリニューアル。1階にアーティストのための作業部屋やミーティングルーム、2階にゲストハウスの宿泊客用に2・4・6人部屋が9つ用意されています。インテリアがとにかくユニークで面白い!
レゴブロックで珊瑚旅人宿とハングルで書いてあります
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ナビが泊まったのは2人部屋
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荷物を置いて次に向かったのが、木尺市場(モッチョッシジャン)にある日本家屋を改築したおしゃれなカフェ「アンドル」。カフェがある一帯は日本統治時代にはお金持ちが多く住む町として、そして1945年以降は市場として栄えたところ。古い家屋が並び、どこか懐かしい雰囲気に包まれています。
■アンドル建物は1930年代に大田府尹(現在の大田市長にあたる職)の官舎として建てられた日本風文化住宅。オーナーは入口の大きなイブキの木に一目ぼれし、みんながくつろげる文化空間を作ろう!と決めてカフェをオープンしたそう。カフェはギャラリー、ミニライブ、フリーマーケットの会場として開放し、いろいろ面白いことやってるみたい。店内は家の古さを最大限に生かしたインテリアで、センスよくまとまっています。とっても居心地がよくってナビはほっこりまったり。
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大田創作センター 大田地下鉄チュンアンロ(中央路)駅からすぐの大田創作センターは大田市立美術館の分館で、大田出身のアーティスト作品の展示を無料で楽しめます。シンプルでモダンな雰囲気が漂う建物は1958年、大田出身の建築家である裵漢九(ぺ・ハング1917~2005)によって設計され、農産物の品質を管理する官公署でした。
インベーダーキャラがかわいい!
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展示内容はよく変わります
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■大田女中講堂(旧大田公立高等女学校講堂)緑色の屋根がとってもかわいらしい大田女中講堂は1937年に建てられたもの。もともとは日本人が通っていた大田公立高等女学校の講堂で、建物は1946年、現在の場所に移築されました。新しく建てられた大田女子中学校舎を見たら、大田女中講堂にそっくり!講堂は現在ギャラリーとして使われています。
小ぶりな建築を楽しんだあとは、いよいよ大田に残る近代建築の横綱的存在?の旧忠清南道庁庁舎へと向かいました。
■旧忠清南道庁庁舎
以前は公州(コンジュ)にあった忠清南道庁が移転して作られた庁舎は、朝鮮総督府建築課の笹慶一が設計した、典型的な日本統治時代の官公庁スタイル。笹慶一は旧ソウル市庁(現・ソウル図書館)、大法院(現・ソウル市立美術館)、旧制京城帝国大学本部・医学部(大学路にある旧ソウル大学)を設計したことでも知られている人。2012年12月、道庁は大田市郊外に移転。旧庁舎は歴史博物館として整備がすすんでいます。
ナビが訪れたとき、庁舎の歴史を詳しく紹介する「登録文化財忠清南道庁と大田」展が開かれていました。
道庁を出るとあたりは真っ暗!お腹もぺこぺこ。やっぱり大田ならではのものを食べないと!とおいしい店を道庁の方に聞いてみました。案内してもらったのが偶然にも「珊瑚旅人宿」の向かい側のお店でした。
■水原ソンカルグクス
実は大田ならではのご当地グルメ、大田だけで食べられる料理はこれといってない、というのが本当のところ。けれども有名なのがカルグクスと、トゥルチギという豆腐や野菜、豚肉もしくはいかと野菜を辛く味つけした炒め煮料理。ナビは、水原ソンカルグクスでカルグクスとトゥブトゥルチギ(豆腐の炒め煮)をオーダー。カルグクスはにんにくがしっかりときいたスープでうまうま!トゥブトゥルチギは、食感のよい木綿豆腐とピリ辛のタレがよくからんでおいしい~タレにカルグクスをつけて食べたらどんどん食べられました。
にんにくのきいたスープともちもちの麺
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タレもおいしいトゥルチギ
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■GREEN GABLES お腹いっぱいになったナビですが、お疲れの一杯をしたいもの。広い庭のテラス席が気になっていたお店「GREEN GABLES」に入り、ビールをオーダー。とってもおしゃれなこちらのお店、1944年に建てられたある有名大学学長の家を改築し、2011年にオープン。バースペースも奥にあるレストランスペースもオーナーのさりげないセンスが光るインテリアが好印象。とても築70年の家に見えません!
大田二日目 歴史を静かに語る建物たち
久しぶりに二段ベッドの上で寝て、懐かしい気持ちでいっぱいだったナビ。
朝はゆっくりと起きてまず向かったのが国鉄大田駅。
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鉄道庁大田地域事務所財務課補給倉庫三号国鉄大田駅の東広場と呼ばれる駐車場に、古い木造小屋がポツンとあります。まるで、そこだけ時間が止まっているかのよう。この小屋は補給倉庫と呼ばれる倉庫で、朝鮮戦争後、鉄道庁の必要物資の移動・保管するため1956年に建てられました。もともとは何棟か並んでいたのですが、一つだけ近代遺産として残されました。年に数回、音楽会などの文化イベントが行われています。
■蘇堤洞鉄道官舎
1904年に京釜線鉄道敷設と大田駅の開通に伴い、ハンバッ(韓国語で大きな田んぼという意味)と呼ばれる寒村だった大田は鉄道駅を中心に都市として発展していきました。駅の東側の蘇堤洞(ソジェドン)には1920~30年代に作られた日本人鉄道技術者の鉄道官舎が約30棟残っています。再開発区域に指定されて撤去の危機にあるのですが、どこか懐かしい風景が楽しめると、ちょっとした観光スポットになっています。
数年前から市民団体や自然発生した若いアーティストたちのまち再生運動が盛んに行われ、住民と一緒にイベントを開いたり、官舎の一部がアーティストの作業場として利用されています。街を歩いていると、なんだかハッピーな気分になってくるような気が。ナビが写真をとっていると、骨董品屋のおじさんが出てきて、こんな一言。「なんだか最近若い子たちがここに来ることが多くなってね、うちの横のお化け屋敷なんか有名な建築家が買い取ろうとしてるらしいよ。よくわからないけど、でも面白いよね。」
押入れもあるのだとか…
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蘇堤洞42号の家はコミュニティスペースに
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ハンバッ教育博物館(旧三省初等学校校舎)1992年にオープンした「ハンバッ教育博物館」は韓国の教育史の関連資料を約6,000点展示。建物は1911年8月に三省堂小学校校舎として建てられ、日本人子弟が多く通っていたとか。二階建てのおしゃれな赤レンガの建物で、忠清南道庁と同じようなエントランスと丸窓が印象的。
教育博物館を出ると午後1時を回っていました。おなかがへったー、この日のお昼は大田で知らない人はいないとっても有名な冷麺屋さんで決まり。
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沙里院麺屋本店(サリウォンミョンオクボンジョン) 店名は創業者の故郷、黄海北道(ファンへプット)の西部にある沙里院から。朝鮮戦争の時、北から大田に避難しオープンしたそう。立派な3階建てビル!冷麺の量がたっぷりなのと、そばの香りが強めの個性的な麺が人気の秘密だとか。大きな餃子は一皿6個ですが、ちょっと食べたい人向けにハーフサイズ3個があります。
時間を確認すると、もう午後2時。移動時間短縮のためタクシーに乗り、旧忠清南道庁官舎に向かいます。すっきりとしたプラタナスの木が続く静かな静かなところに住宅街がありました。
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旧忠清南道庁官舎 1930~40年代にかけて作られた官僚住宅街。朝鮮戦争の際、李承晩大統領の臨時住居にもなった忠清南知事公館をはじめ、行政府知事や政務府知事の官舎などが10棟が集まっています。しかし現在は2012年12月の道庁移転に伴い、空き家になっています。維持するだけでもいろいろな費用がかかりそう・・・けれど大田市の文化財にも指定されたので、おいそれと壊すわけにもいきません!道庁も官舎の有効活用法をいろいろ考え、アーティストのレジデンス施設として使う案が通ったとか通らないとか?
今回周ったスポットはここ!
午後5時、ソウルに着くように午後4時のKTXの席を予約。少し時間があったので国鉄大田駅に行く前に、聖心堂本店の2階でパッピンスをいただきました。実は駅構内にも聖心堂があり、名物パンが買えます。お土産に買う人たちが列を作っていて、人気の高さがうかがえます。ナビはけっして聖心堂の回し者ではないけれど、揚げソボロパンとにらパン、大田に行ったらぜひぜひおためしを~大田の旧市街に残る古い建物を見て歩くプチ旅、いかがでしたか?皆さんもちょこっと足をのばして行かれてみてはいかがでしょうか?以上、古い建物好きのソウルナビがお伝えしました。