がんばれベアーズ2014!2014年3月29日斗山ベアーズ対LGツインズ開幕戦@蚕室野球場~しばさきのキムチとバット~日韓野球考・第32回~

今年もいよいよやってきた!笑いと涙の大熱戦!韓国プロ野球のはじまりはじまり~♪

蚕室野球場にも春がやってきた

蚕室野球場にも春がやってきた

もう~いくつ寝ると~開幕戦~♪
野球ファンにとって開幕戦はお正月よりも『新しい年が始まると感じる日』である。その昔、開幕戦で野球仲間と球場(日本の球場)で久しぶりに会ったときには、『あけましておめでとうございます』と挨拶していたこともあった。今年は、そんな開幕日をソウルで迎えることになった。幸運なことに、月に一度のペースで行っているソウル出張の日程が、開幕戦と重なったのだ(嫁さんからはわざとらしいと言われているが)。兎にも角にも、開幕戦をソウルで見てきたので、今季の韓国プロ野球の見どころと合わせてレポートしよう。

2014年シーズンに先立ち、いろいろと新しくなった!

2013年シーズンは4位でポストシーズンに進出し、準プレーオフ、プレーオフを勝ち上がり、韓国シリーズも金持ち球団の三星ライオンズを相手に第7戦まで戦い、ポストシーズン記録となる合計16試合の激闘の末に敗れた斗山ベアーズ。惜しくもチャンピオンにはなれなかったものの、ファンの胸には感動が残ったシーズンとなった。その熱気が冷めやらぬまま突入したオフシーズンは、ポストシーズン以上の激動が待っていた。FAで瞬足外野手、好守のショートストップ、当たればデカい大砲の3名が抜け、元メジャーリーガーのエース級投手が抜け、強肩のベテラン控え外野手が抜け、東京ヤクルトにも在籍したベテランの左腕投手が抜け、伸び悩み気味だったが上手く育てばと思っていた若手が抜け、将来の4番候補が抜け、韓国シリーズに進出したものの采配に批判が少なくなかった監督が解雇され・・・少々、騒がしいオフとなった。

ファンからは球団代表やフロントに批判が集まり、評論家からも疑問が投げかけられたのだが、ベアーズファン歴17年の私に言わせたら、『そんなもん、今に始まった話やない。逆に、こういうシーズンに強いのがベアーズの伝統やないか』で済む話。過去にもエース投手や主力選手が抜けて、どこの馬の骨かといわれる選手が開幕スタメンに名を連ねたシーズンは意外と善戦するのがベアーズの伝統である。二軍監督から昇格した元・近鉄コーチのソン・イルス監督(日本名=石山一秀)『伸びしろのないベテランが出て行っただけで、伸び盛りの若手が残っているので大丈夫』と仰っている。もう、私は、2014年も韓国シリーズに出たら出張の日程にどうやって合わせようかと悩み始めているのである。

新しくなったのは、監督だけではなく、球場も所どころ新しくなった。フェンスがメジャーリーグで使用されている素材のものに交換され、色もブルーになった。ダッグアウトに隣接されているブルペンの先には、エキサイトシートが新設された。内野スタンドの上部座席の椅子が交換され、色がイエローからネイビーに変更された。バックネットもメジャーリーグで使用されているものに変更されたり、記者席や放送席も手直しされたりした。

開幕戦の前日の夕方に、斗山ベアーズのチョ・ソンイル部長(施設管理チーム長)を訪ねていったところ、『ちょっと、新しくなったフィールドを見ていくか?』と誘われて、フェンスを触らせていただいたのだが、もう何時間後には、ここで開幕戦が始まるのだと思うと興奮してきた。
開幕戦前日の静かなフィールドに立つチョ・ソンイル部長

開幕戦前日の静かなフィールドに立つチョ・ソンイル部長

今季から新設されたエキサイティングゾーン

今季から新設されたエキサイティングゾーン

ソン・イルス監督が陣取るダッグアウトから見たフィールド

ソン・イルス監督が陣取るダッグアウトから見たフィールド

もう何時間か経てば選手たちが座るベンチ

もう何時間か経てば選手たちが座るベンチ

決戦前夜の蚕室野球場

決戦前夜の蚕室野球場

球場外壁にある飲食店も最終準備中

球場外壁にある飲食店も最終準備中

天気予報は開幕戦当日の午後から雨・・・

3月23日(日)夜にソウルに入り、24日(月)から28日(金)まで仕事をし、29日(土)の開幕戦は取引先の社長と販社の担当者と見に行くというスケジュールだった今回の出張。出発前に見た週間天気予報は、24日から25日にかけて少し雨が降る以外は晴れという予報だったのに、26日頃から29日は雨という予報が出るようになった。各テレビ局の天気予報、各ポータルサイト、お天気アプリ、様々な種類の天気予報を見ても、どこも雨、雨、雨。雨が降っても取引先とのミーティングは出来るけど、野球は雨だと中止になってしまう。前日には取引先の社長からカカオトークで『天気予報は雨だけど、野球はあるの?』とメッセージが入ってくるし、当日の朝のテレビの天気予報も強い雨ではないけれど、雨は降りそうだと伝えていた。チョ・ソンイル部長は『今年から週末の試合が中止になったら月曜日に試合が組まれることになった。土曜日のチケットは売り切れだけど、月曜日に試合があった場合はお客さんもあまり来ない。それにライバルLGツインズとの試合は球場内の売り上げも相当なものだから、少々の雨なら試合はやるよ』と仰っていたので、プレイボールがかかる確率は高いだろうけれど、濡れながら見るのは嫌だ・・・そんな気持ちで午前中を蚕室野球場から徒歩7分のホテルの部屋から空を見ながら過ごし、午後12時、祈るような気持ちで球場に向かった。ホテルの外に出る。雨は落ちていない。何とか試合開始の2時、いや、試合が終わる5時ごろまで降らないで欲しいのだが・・・。

球場に着くと、既に大勢のファンが詰めかけていた。LGツインズのファンも斗山ベアーズのファンも、ほとんど同じくらいか。プレイボール2時間前なのに、ユニフォームや帽子、応援で使う風船棒をばっちり準備したファンが地下鉄の出口から次々とやってきていた。

ソウルナビで紹介できるネタを探して球場周辺を一周した後、いつものようにチョ・ソンイル部長を事務所に訪ねると、関係者食堂で食事をしていくかと誘われ、食事に行こうとしたら、事務所には大量の黒い野球のヘルメットが置かれ、職員の方がセッセと『蚕室野球場』とハングルで書かれたステッカーを貼る作業を行っていた。今季から新設されたエキサイティングゾーンの観客が被るヘルメットなのだが、間もなく試合が始まるという時間になってもステッカーが貼り終わっていないとのことで、私とチョ部長も急遽、作業を手伝うことになった。女性職員の方に『海外から来てもらったお客様にこんな作業をしてもらうなんて申し訳ないです』と言われたが、私はめでたく、『蚕室野球場のエキサイティングゾーンのヘルメットにステッカーを貼った日本人第一号』となる貴重な経験ができたのだった。

その後、関係者用食堂で食事をしたのだが、メニューはトンカツ。やはり勝負の世界は縁起を担いで『カツ』なのか?韓国語で『勝つ』は『イギダ』なので、関係ないとは思うが、案外、母語が日本語のソン・イルス監督のリクエストだったりするのかなと思ったりしながら美味しく頂き、そろそろ待ち合わせの時間なので、待ち合わせ場所の中央入場口の前に向かった。取引先の社長と販社の担当者が渋滞のため、約束時間の1時半には間に合わないとのことだったので、先に観客席に入ることにした。中に入ると、既に開幕のセレモニーが始まっていた。今日は同じ蚕室野球場を本拠地とするLGツインズとの試合だが、斗山ベアーズのホームゲームなので、ベアーズが1塁側、ツインズが3塁側である。ラインに沿って選手が並んでいた。ソウルの各区から1名ずつ選ばれたファンとベアーズの選手がハイファイブをし、国歌斉唱、始球式とセレモニーが進んでいく。始球式はソチ・オリンピックの女子スピードスケートの金メダリストであるイ・サンファ選手。上下ともベアーズのユニフォーム姿でマウンドに立ったのだが、アイドル歌手とは違い、体格がよく野球のユニフォーム姿が決まっていた。

始球式が終わり、ベアーズの選手たちが各ポジションに散ったところで、販社の担当者から球場に着いたと連絡があった(正確にいうと、セレモニーの最中に何度か電話を頂いていたのだが、応援の音が大きすぎて気づかなかった)ので、ベアーズ先発ダスティン・ニッパート投手が第1球を投げたところで入場ゲートまで迎えに行った。ケンタッキーフライドチキンでチキンとバーガーのセットを買い、もう一度、座席に戻った時には何だかんだで1アウト満塁のピンチを迎えていた。1回の表からLGツインズの大量得点の予感である。取引先の社長はLGのファンで、私と販社の担当者は斗山のファンなので、あまり一方的な展開は嫌だと思っていたのだが、ニッパート投手は押し出しによる1失点だけに防いでくれた。とりあえず一安心である。

1回の裏の攻撃前は、ベアーズの応援歌『勝利の斗山』を歌うのが恒例なのだが、メンバー3人が入れ替わったチアリーダーのダンスにスタンドが盛り上がる。取引先の社長も10数年ぶりの野球観戦らしく『最近の野球場は華やかでエエのぉ』という表情で応援ステージを見つめていた。応援歌が終わると、いよいよ攻撃開始。これまた新しく応援団長になったハン・ジェグウォンさんが応援のリードを取る。1番バッターのミン・ビョンホン選手が応援に応えて2塁打を放ったものの、この回は無得点。2回裏にベアーズがヤン・ウィジ捕手のソロホームランで同点に追いつくが、3回表にLG打線が不安定なニッパート投手を攻めて2得点して1-3。天気もニッパート投手の調子もすっきりしない。
今季から座席の色が変わったスタンド上段

今季から座席の色が変わったスタンド上段

地下鉄総合運動場駅のフォトゾーンは、まだ選手の写真が付けられていなかった。

地下鉄総合運動場駅のフォトゾーンは、まだ選手の写真が付けられていなかった。

エキサイティングゾーンの観客用ヘルメット

エキサイティングゾーンの観客用ヘルメット

総合運動場近くの交差点。試合開始2時間前なのにユニフォーム姿のファンが

総合運動場近くの交差点。試合開始2時間前なのにユニフォーム姿のファンが

入手困難だった開幕戦のチケット

入手困難だった開幕戦のチケット

オフィシャルショップ『ベアーズハウス』には大勢のファンが詰めかけていた

オフィシャルショップ『ベアーズハウス』には大勢のファンが詰めかけていた

飲食店からは威勢のいい掛け声がしていた

飲食店からは威勢のいい掛け声がしていた

ベアーズのマスコット『鉄熊くん』も元気に開幕戦を迎えた

ベアーズのマスコット『鉄熊くん』も元気に開幕戦を迎えた

開幕戦の始球式に登場したイ・サンファ選手

開幕戦の始球式に登場したイ・サンファ選手

野球を見ながら食べると美味しさ倍増

野球を見ながら食べると美味しさ倍増

外国人選手のパワー炸裂!

そんな雰囲気を一掃したのが、一発のホームランだった。3回裏、2死1、3塁で打席に立ったのは新外国人選手のホルヘ・カントゥ内野手。今季から外国人選手は3名登録・2名出場(2013年からリーグに加わったNCダイノスのみ4名登録3名出場)と枠が広がったことにより来韓した外国人選手である。メジャーリーグ通算104本のホームランを放っている選手だが、このチャンスにそのパワーを見せつけた。センターのフェンスまで125mと広い蚕室野球場のスコアボードの下にライナー性の当たりで飛び込む逆転のスリーランホームラン。打った瞬間にわかる目の覚めるような一撃だった。こんな当たりのホームランを蚕室野球場で見たのは、タイロン・ウッズ選手以来である。今季の韓国プロ野球の見どころの一つに挙げられていた外国人野手の長打力だが、開幕戦から早速、その威力が見られた瞬間だった。

その後、ベアーズは5回にもオ・ジェウォン選手のソロホームランが飛び出し、6回からニッパート投手の後を継いだホン・サンサム投手が珍しく四球を連発せずに2イニングを打者7人に抑え、8回はチョン・ジェフン投手がソロホームランで1点を失ったものの、9回はイ・ヨンチャン投手が締めて、5-4で開幕戦を勝利した。

開幕戦の前からソウルは気温が暖かくなり、日中は20度を超える日もあったのだが、この日は少し肌寒く、今すぐにでも雨が降りそうな曇り空だったが、幸いにも雨はほとんど降らずに無事に試合が行われた。球場の近くでも桜が咲き始め、蚕室野球場に歓声が戻ってきた。ソウルに春がやってきたことを実感する一日となった。
ベアーズの開幕ラインナップ

ベアーズの開幕ラインナップ

開幕投手はエースのニッパート投手

開幕投手はエースのニッパート投手

沸き返るスタンド

沸き返るスタンド

ホームランに旗が舞う

ホームランに旗が舞う

元気いっぱいのチアリーダー

元気いっぱいのチアリーダー

攻守交替時のダンスは今季も健在

攻守交替時のダンスは今季も健在

初回のピンチにどうなることかと思ったが・・・

初回のピンチにどうなることかと思ったが・・・

開幕戦はベアーズの勝利!

開幕戦はベアーズの勝利!

2014年の韓国プロ野球、観戦5大ポイント!


① 外国人選手のパワーに注目!
本文にも書いたが、外国人選手枠が拡大され、各チームに野手の外国人選手が加入した。彼らの活躍が順位争いにも大きく影響すること間違いなし!

② 今季も変則日程に要注意!
来季から10球団体制となるが、今季まで9球団で行われるペナントレース。必ず1チームは試合ができないことになり、選手起用のやりくりの成否が勝敗を分けることも。2チームが本拠地として使用する蚕室野球場も、試合が行われない日もあるので、韓国旅行の日程を組む際には試合スケジュールをしっかりチェックすべし!
(注意:韓国プロ野球は、あえて9月中旬以降の日程はシーズン前に編成されません。雨天中止状況や興行面を考慮して、8月末頃に編成されます。さらに今季はアジア大会もあるので、既に発表されている9月前半の日程が大幅に変更される可能性もあります)

③ 春と秋はデーゲームを満喫しよう!
昨年とは異なり、4、5、9、10月の祝日と日曜日は14時から試合が行われることとなった(昨年までは17時開始。今季も土曜日は17時開始)。太陽のもとでの野球観戦を楽しもう!

④ ソウル、ソウル、ソウル♪
チョー・ヨンピルのヒット曲ではないが(嗚呼、歳がバレる-笑)、昨年に引き続き、ソウルを本拠地とする3球団が全てポストシーズンに進出するかも注目だ。ネクセン・ヒーローズは、狭いモクトン球場を強力打線が沸かせ、LGツインズは長い低迷から抜け出し、斗山ベアーズは世代交代が進む。ご近所同士のライバル対決はヒートアップ間違いなし!

⑤ アジア大会で韓国プロ野球の未来が決まる?
9月にインチョンで行われるアジア大会。オリンピックで野球が正式種目から除外された今、兵役免除が勝ち取れる機会はアジア大会だけである。金メダルが兵役免除の条件となるが、いかに将来有望な若手をメンバーに入れて勝つことができるかがカギとなる。ペナントレースを中断するかしないかは、まだ決定していないが、メンバーの選出とペナントレースの続行か中断かが、今季、いや来年以降の韓国プロ野球の行方を左右することになるだろう。


<2014年 斗山ベアーズ主催試合チケット料金>
VIP席 60,000ウォン
テーブル席 40,000ウォン
エキサイティングゾーン 20,000ウォン
ブルー指定席 12,000ウォン(金~日15,000ウォン)
レッド指定席 10,000ウォン(金~日12,000ウォン)
ネイビー指定席 9,000ウォン(金~日10,000ウォン)
外野自由席 7,000ウォン(金~日 8,000ウォン)
※外野自由席は軍人/青少年、子供/障害者/敬老者の料金設定あり

平日は当日券でも入場可能な場合が多いですが、週末の好カードの場合は満員札止めのケースもあります。日本のプロ野球とは異なり、高い座席から売れる傾向があります。また、VIP席やテーブル席は年間契約者もいるので、一般売りの枚数が限られます。
関連タグ:プロ野球

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2014-04-09

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